IDEA and Players

ベンチャー企業で働く変なエンジニアが勝手なことを書きまくるブログ

ビジネスコンテント・ジギョつく@福岡に応募する!「残念.me」敗戦記

思い立ったが吉日、とはよく言ったもので。
2013 Feb, Startup Weekend TokyoのFBグループ上で告知がされていた流れで、サイバーエージェント様主催のジギョツク@福岡に自分たちのビジネスアイデア「残念.me」を応募してみたのですよ。
いや、だってね、SWTの審査で最も笑いを取っていたアイデア、その名も"ウンコでつながるSNS「UNCONNECT」"も応募するって聞きまして。
「UNCONNECT」が応募するんなら、「残念.me」だって応募して悪いはずがない!と、対抗意識を妙に刺激されてしまったわけです。
この「UNCONNECT」について私、SWTの審査時にはびみょーに"笑い"で競り負けていたこと、根に持っていたりなんかして。

ところで「UNCONNECT応募!」の報が届いたのが、なんとその締め切りの前日のこと。
なにくそ遅れを取ってなるものか、と、慌ててエントリーシートを作成、なんとか応募に漕ぎ着けたまではよかったんですが、こともあろうに我らのエントリーのことが社内(つっても私を含め、三人しかいないんですが)に知れ渡るというアクシデントが発生。
つまりは、うちの社長と、デザイナーなんですが、この二人、なんとそれぞれ自分たちも応募する、と言い出しやがる。

おい、ちょっとまて、仕事はどうすんだ? 社長!
それに、デザイナーのO女史・・・貴様はSWTでオレと同じチームだったじゃねーか! ここはオレと一緒に「残念.me」を応援するのが筋じゃねーのかYO!
・・・などと言っても、この二人が素直に聞くはずもありません。

「いやー、今度こそは私のアイデアで勝ってみせますわー」と余裕のO女史。
「いやー、企画でぼくが負けるなんて絶対ありえんわー」と自信の社長。

そんな大阪弁二人組に、ぐぬぬ、となる自分。

なんなのだ、こいつらの厚かましさときたらっ・・・!!!
思わず、この二人の頭の中に「遠慮」とか「控えめ」といった美しい日本語を叩き込んでやりたい衝動に駆られましたが、ガチ標準語の心優しい私めにそのような蛮行、当然ながら及ぶべくもありません。

えーい、くそ、勝手にしやがれってんだ!!

第一次選考

そんなこんなでいちおー応募をしたものの、正直あまり期待はしていなかったんですよね。
だって、「残念.me」ですよ? あなた?
言うなれば、これは就活している学生がですね、会社の面接に↓な格好をして出向くようなものです。

まともなビジコンなら、こんなアイデア、真っ先に落としにかかるに決まってます! それが世間ってもんでしょーがっ!
そんなわけで、「もしかしたら今度、福岡に出張するかもしれんけどー、まあ、まず審査に通らないと思うけどねー」と嫁にも軽ーい感じで伝えておくにとどめ、特にスケジュールの調整もしていなかったわけであります。

と・こ・ろ・が

大変お世話になっております。
ジギョつく@福岡運営事務局の渡邊と申します。

運営事務局にて厳正な審査を行った結果、
一次審査を【通過】とさせて頂きましたので
ご連絡させて頂きます。

なんですと? 通過!?
おいおいおいおい! マジかよ!? 大丈夫なのか、サイバーエージェント!!(失礼なヤツ)

ともあれ想定外の事態に、思わず動揺、そして興奮する私たちチーム一同。
ふと見ると、一人で暗い顔をしているO女史の姿が。

「おかしい・・・私のアイデアが一次審査を通らないなんておかしい・・・きっと審査で握りつぶしておいて、サイバーエージェントでパクる気に違いない・・・そうにちがいない・・・」

あらまー、落ちていたんですかー。それはお気の毒でしたねー(棒読み)。
「私のアイデアが通らないのはどう考えてもお前らが悪い」状態のO女史の一方で、うちの社長はどうなったのかというと・・・

通りやがった。あっさりと。
マジか、こいつ!?

というわけで、三人しかいない我が社において、二人の案が一次審査を突破するという異例の事態が発生。
さらに言えば、残りの一人は、私のチームの一員でもある訳で・・・いわば全員が当事者という有様。
こんなぼくらで本当にいいんですか、サイバーさん! こんなぼくらを呼び寄せて、大丈夫なのか、福岡!?

あ、ちなみに、「UNCONNECT」は落ちました。
その結果に、サイバーエージェントの良心を見たの私だけではないはず。ぬははははは。

出発準備

そんなわけで、ビジコン開催当日の3/15(金)は、我が社の休業が決定した次第であります。・・・いや、違った。これも我々の重要な仕事なんです。我が社の存在を日本中に知らしめる、その重要な一歩を福岡に刻むのです。
そう、これが仕事でなくて何でありましょうか!・・・べ、別に福岡のもつ鍋が食べたいわけじゃないんだからね!

さて私、本当はその翌日3/16(土)は楽しみにしていた大江戸Ruby会議に参加する予定だったんですが、断腸の思いでキャンセル申請。
そしてSWTで行動を共にした仲間たち、チーム「Shippai on the go」の面々と共に、プレゼンの準備に取りかかったのでした。

さらには福岡へ向かうための航空チケットの確保。
と、ここで飛行機のチケット代と、福岡に飛来したPM2.5のニュースによって、福岡行きを断念したのがO女史。

「優勝賞金が50万円で、たとえ優勝しても5人チームなら一人当たり10万円。あかん、交通費を取り戻すには期待値が低すぎるわー」
・・・なんという現実的、かつ冷徹なそろばん勘定。君の体には、ロマンという血は流れていないのか!?

そして、もう一人、なぜか東京にやってきて、ちゃっかり我が社の事務所で寝泊まりしている大阪出身の大学生、ジュンさんもまた脱落。
理由は、すでに内定している会社の講座があったのを忘れていた、とのこと。しかも飛行機チケットを買った後に気がついたらしい。そして、LCCなので払い戻しもできず・・・。
なんという見事な失敗! 君こそ我が「残念.me」チームのホープだ!!w

というわけで結局、福岡入りするのは、私、ヒロさん、ユーヘーさんの3人に。

一方、うちの社長は特にプレゼンの準備をするわけでもなく、徒に日々を過ごすばかり。
挙げ句には「いやー、いかん、応募したアイデアでは勝てん気がしてきた・・・」などと弱気なことを言う始末。
ふっふっふ、この勝負、もはや戦わずして勝ったも同然。待ってろ、オレたちの50万!

そして、とうとう当日に。
朝の福岡空港に降り立った我々を出迎えたのは、東京よりもだいぶ春めいた風景、そして吹きすさぶスギ花粉とPM2.5。
はーっくしょい。

戦いの火ぶた!

というわけで、いよいよビジネスコンテスト、ジギョつく@福岡の決戦の火ぶたが切られたのでした。
最終選考に残ったのは、全部で6チーム。さてさて、栄光の賞金50万円は一体、誰の手に!?


※イベントについて説明するサイバーエージェントの渡邊さん


※6チームの発表内容とその順番。4番目の「ボーケンたん」がうちの社長のアイデア。5番目が我らの「残念.me」という順番。

さて、トントン拍子に各チームの発表が終わり、やがてウチの社長の出番となりました。
どうやらこの男、元々応募した自分のアイデアに見切りをつけたらしく、自社で開発中のサービス「ボーケンたん」についてプレゼンすることに決めた模様。まあ、社長としてはむしろ当然と言える決断ですが、え、でも、ちょっと待てよ。ねえ社長、そのアイデア、我が社の秘蔵っ子じゃありませんかっ!!!
「ボーケンたん」ってサービス名の案だって、もともと私が出したんですよ! ねえ、ちょっと!


※自社で開発中のサービス「ボーケンたん」についてプレゼンするうちの社長

社長の手慣れたプレゼンもあって、審査員からの反応は上々の様子。
そりゃ、この一年ほどの間、我が社で念入りに練ったアイデアだけあって、ビジョン、実現性、収益性の絵がしっかりと描けているわけですよ。まさにビジネスコンテントにお誂え向きのプレゼン内容。

ヤバい、こいつはヤバい。
以前ブログにも書きましたが、ぶっちゃけ「残念.me」には、これは、と言えるような収益モデルは確立できていないんです。その点、ビジネスコンテストでは致命的に不利といえるでしょう。

しかし、戦いとは、すなわち最後まであきらめないこと。
それこそ「残念.me」のモットーですから。


※残念.meについてプレゼンするヒロさんとユーヘーさん

飛行機の中も、会場に着くまでも、ずっとずーっとプレゼンの練習をしていたヒロさん。そしてユーヘーさんを舞台に送り出し、私は写真撮影係へ。
なんで、お前がプレゼンしないのかって? そりゃあ、私よりずっと上手にできる人がいるからです、当然!

狙い通りに笑いを取りながらも、つつがなくプレゼンは終了。やったぜ、ヒロさん!
そして、次に審査員からの質疑応答の段となりました。
まず最初に、九州大学の五十嵐さんから一言。

「うーん、このサービス、あってもいいけど別になくてもいいよね」

あー、またか。この言葉。SWTでも言われたなー。

そりゃ、「残念.me」がなくても生きていけます。ぶっちゃけ、誰も困りはしません。

でも、今の現代社会って、見渡せばそんなものばかりじゃないですか?
そのブランド品、必要ですか? 笑いって必要ですか? 音楽はどうですか?

でも文化って、もともとそういうムダなものから始まると思うんですよね。
音楽も、マンガも、映画も、小説も、Webも、ゲームも。
生存に必要な条件が労せずして満たされる現代社会じゃ、そういったムダがないと人間は生きていけないと思うんです。
私たちが作り出そうとしているのは、そういった文化のひとつ、人々を幸せにできればいい、と願って作るムダなんですよ。

・・・とまあ、同じ質問に出会うたびに頭の中ではいつも同じことを考えるんですよね。
でもなかなか、その場でスパっと答えられないのが問題ですな、自分。

そして、次に株式会社サイバーエージェントベンチャーズ代表取締役の田島さんから次のような質問が。

「普通の人は、SNSでわざわざ自分のネガティブなことを出したくないんじゃないか。少なくとも自分はセーブしてしまう」
一様にうなずく審査員一同。

私の考えでは、たとえばFacebookTwitterのような代表的なSNSはいわば街中の大通りのようなものなんですよ。
そこをパジャマで闊歩するような人は皆無とは言いませんが、まあ稀でしょう。つまり、ユーザは多かれ少なかれ、各SNSの中で設計され、醸成された雰囲気、その文脈(コンテキスト)に合わせて行動するはずなんです。
つまり、SNS上でネガティブな自分をさらしたくない、というのはこの原則によって知らず知らず自分の行動を束縛していることの現れだと思う訳です。

私たちがこれから作り出すべきサービスは、そういった大通りにとってかわるものではなく、その大通りから伸びる枝道、裏通りとなるはずです。そして、その枝道の中にそれぞれの文脈を与えてやれば、ユーザはまた違った行動をするはず、というのが「残念.me」の根本にある仮説です。

つまり、FacebookTwitterではやらないことも「残念.me」の中ならユーザはやってくれるはずなんですよ。サービスをそういう風に設計しさえすれば。

そして何より、功なり名を遂げた大人たちが積極的に自分たちの失敗をさらすことが、若い人たちに勇気を与え、行動を引き起こすはずだ、という価値。
堂々と自分の失敗について語ることができるのは、ちんけなプライドではない、本当の自信を持った人間だけだという証明。
そういった積極的な行動文化を生み出すことが「残念.me」の究極的な目標なんですよ、皆さん!
だから、ネガティブなんて言ってないで、ぱーっと自分の失敗、さらけ出しちゃってくださいよ!

「『残念』というキーワードを武器に、世界をめった斬りにしてやりたいんです!
 『カワイイ』、『ヘンタイ』の次に、国際社会で認知される日本文化は『ザンネン』ですよ!
 『残念.me』の次は『残念.jp』を作って、残念な日本について世界中に向けて勝手に発信してやります。そうして、日本が中途半端に引きずっている成功体験を片っ端からぶっ壊してやりたいんです!」

・・・などと鼻息荒く説明したら、皆様、笑っておりました。いや、ぼくはマジだったんですけどね。

そういった力説の甲斐もあってかどうかは分かりませんが、田島さんからは「メディアとしては面白い。十分にバズる可能性がある!」とのお言葉が。
うおお、うれしいぜっ!!

まあ、そんなこんなで私たちのプレゼンタイムも無事(?)終了したのでありました。

審査発表!

すべてのチームのプレゼンが終了して、いよいよ審査発表となりました。


※いよいよ審査発表!

優勝したアイデア、それはやはり「ボーケンたん」でした。
あー、やっぱりねー。悔しいやら、嬉しいやら、なんだか複雑な気分・・・。

「彼女と福岡に遊びに来たついでにコンテストに出たので、まさか優勝できるとは思っていませんでした(てへぺろ)」
とは、うちの社長の言。

このとき、私を含め、他の出場者全員が心の中で、ぐぬぬ、となったのは間違いないでしょう。
まったく、こんなことなら福岡に来れないよう、社長を東京の事務所に縛り付けておくべきだった、と悔やんでも後の祭り。

まあ、最終的にうちの会社が勝ったわけだから別にいいんですけどね・・・。

戦いの後

今回、優勝以外の賞はないんですが、私たち「残念.me」は自分たちで勝手に第二位だと決め込みましたよ。
・・・というか、もしも残念賞があれば絶対、それウチらのだし!(断言)

ともあれ熱き戦いの後、ぼくらのチームは夜の街に繰り出し、残念会を開いたのは言うまでもありません。
名高い歓楽街の中州をほっつき歩き、怪しいお兄ちゃんたちに声をかけられ、怪しいお店の看板に後ろ髪引かれながらも、優勝賞金を逃したぼくたちにできるのはせいぜい屋台のラーメンをすすることくらい。
いや、ちゃんと名物のもつ鍋も食べましたけどもね。

福岡のまだ肌寒い夜空の下、しかしぼくらの心は折れるどころか、むしろ未来への確かな手応えを感じておったのです。
自分たちの熱量の高まり、がむしゃらに走り出してやりたいという衝動を。

なにしろ、我らの「残念.me」。
たとえ負けたとしても、その時点でネタ的にはすでに勝っているという、黒魔術的なアイデア。
誰も我々を打ち負かすことなどできはしないのです。少なくとも、自分たちがあきらめてしまう以外には。

何度でも失敗し、何度でも立ち上がり、そうしてまた明日に向かって歩き始める。
また、もう一度、それをやるだけのことですから。

今回のジギョつく@福岡、そういった自分たちの気持ちを確かめる、良い機会になったと言えるでしょう。
関係者の皆様にあらためてお礼を申し上げます。

そして、最後にこれだけは言っておきたい。

チキショーーーーーーーッ!!!(心の叫び)