IDEA and Players

ベンチャー企業で働く変なエンジニアが勝手なことを書きまくるブログ

スタートアップの"生産性"という幻影、または希望について

 久々のブログ更新です。

 つい、先日のこと。

「これからイケてる会社のエンジニアを紹介するぞ!
 私の大好きなスタートアップ企業をたくさん集めて勉強会を開くのだ!
 もしも貴様がそこでナイスな発表ができたなら・・・
 貴様は兵器になる! スタートアップに祈りを捧げる死の司祭だ!
 だが、その日まではウジ虫だ!
 口でクソたれる前と後で”YES!”と言えっ!
 わかったか、このウジ虫がッ!!」

と、会社の人事兼広報担当(女性)からハートマン軍曹ばりの命令が下ったのでした。

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 「急成長スタートアップにおけるDeveloper Productivity向上の実例」 〜アカツキ × Wantedly × Sansan × じげん × Talknote〜 - Startup Tech Talk | Doorkeeper

 しかも、テーマが"Developer Productivity”ですと!?
 なんだ、その日本人の短い舌を思い切り噛みちぎりそうな英単語は!?

 大体、あれだ。そもそも、スタートアップの世界に確たる”生産性(Productivity)"なんて存在するのか?
 その昔、まだSIerの現場で働いていた頃、「もっと生産性を!」と耳がタコができるほど言われ続けてきた身としては、ITの開発現場において安直に生産性を語ることには抵抗感を覚えるわけですよ。

 昔なつかしの大量生産時代、車やらラジオやらの製品であれば、その価値をユーザに届ける手段は単純に製品をその手に送り届けるしかないわけで、そりゃあ単位時間あたりにどれだけ製品が生み出せるか、という効率性ないし生産性、すなわち『おら、もっと速く、安く、大量に作りやがれ!』的な概念が幅を効かせたのも当然でありましょう。

 だがしかし。 ITの世界ではプログラマの書いた、たった一回かぎりのソースコードが、数千、数万、数億オーダーの人々に価値提供を行える可能性を秘めている訳で。
 しかも、その価値(ユーザ自身の体験を含む)はWebやらゲームやらOSSやらコピペやらを通じて、簡単かつ大量に複製、伝達、再生産することができてしまう。

 そんな世界で
「我々は今月、10人のチームで3万行のコードを書くことができましたっ!!(感涙)
 来月はさらに全力を尽くし、6万行を達成しますっ!! うおおおおっ!!(血涙)」
などと気炎を上げてみても、それが本質的でないのは火を見るよりも明らか。

 それでも開発請負の現場だと割とそれに近いことを要求されることがあって、
 ※だからこそ「こちらは何年モノですか?」というような古いソースコードが延々とコピペして使われたりするわけで
 以前、なんとか品質も維持しながら開発の速度を上げようとして、アレコレやったときの経験からすると、いわゆる生産性と創造性って、下手すると反比例する傾向があるんですよね。
 つまり、ただ"生産性"という名のレールに乗っている人ばかりを増やし、その一方では自分の足で歩き、時につまずきながらも前進して創造しようとする人を邪魔者扱いしてしまったりするわけです。

 納期やら、リソースやら、クライアントやら、WBSやら、進捗会議やら、目を吊り上げて怒れるマネージャーやら、といった大人の諸事情により、

「何、おまえ勝手なことをやってんだよっ!
 それより明日までにこのバグを直しとけっ!」

みたいなことが時に発生してしまうのが現実世界の悲しさですけども、ソフトウェア開発における生産性って、

 プログラマが創造性や問題解決に向き合うための時間的、精神的余裕を生み出す

 ただこの目的を果たすための従属的な役割しかないわけですよ、本来は。

 そんなわけで単純な開発効率を意味する生産性だけを云々するのは(特に、スタートアップの開発現場では)あまり意味がないな、と考えた結果、次のような天邪鬼なタイトルで勉強会に望んだのでした。

 「カオス! スタートアップはカオスなんですよ!」と強調しまくったので、やたらとウケましたw
 下手するとDeveloper Productivityは置き去りになる勢いだったけども。

 勉強会で印象的だったのは、自分だけではなく似たような方向性(たとえば企業文化の作り出し方とか、認識の共有の仕方とか)の話を持ってきた方が他にもいたこと。
 ※Wantedlyの相川さん、三三の藤倉さん
 みんな、わりと同じようなことで悩んだり、考えたりしてるのだなー、と。 
 
 ともあれ、ここ数ヶ月くらい自分でアレコレ考えたり、試したりしてきたことをこうしてアウトプットすることができたのは何とも嬉しいし、他の会社がどんなことを考えて開発しているのか知ることができて、本当にハッピーでした・・・、などと優等生的な締めで終わらせるのも癪なので、最後に一言だけ毒舌しておくと、
 
 「いやー、ウチの開発は本当に生産性が低くて・・・」と、ほざいてるマネジャー。
 テメーのマネジメントがクソなんだよ、クソ!
 (※後頭部に突き刺さるブーメラン)
 
 はい、お後がよろしいようで。