IDEA and Players

ベンチャー企業で働く変なエンジニアが勝手なことを書きまくるブログ

データ・ドリブンと『燃えよドラゴン』的ドリブンの黄金比について

最近、平日の仕事中はがーっとプログラムばかり書いていて、一日の終わりには目はしょぼしょぼ、血が上りすぎて頭が重い、もうPCの画面なぞ見たくないってモードになり、休日も大体そんな調子だったのであまりブログを書く気分じゃなかったんですが、ひさびさに書きたい欲求がふつふつと沸き上がってきたので、ひさびさに休日もMacBookAirを開くことに。
中年プログラマー37歳、とある夏の日の出来事でございます。

最近、弊社トークノートではもっとデータを見ていこう、お互いにデータを示し合いながら議論していこう、という気運が高まっていて、そのためにMixPanelを本格的に導入したり、Google Analyticsのイベントを入れこんだり、とあれこれ数値を取る機会がこれまで以上に増えてきました。

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※MixPanelを導入したら太平洋をはるばる超えて、サンフランシスコからCoolなTシャツが送られてきました。「I AM DATA DRIVEN 」思わず感動。

今日のスタートアップ企業においては、データで思考する、というのは言わばイロハのイであって、出来ていて当たり前、出来ていなければ・・・言うなれば飛行機が視界ゼロ、計器一切なしという状態で操縦されているようなものです。
刻一刻と状況が移り変わり、不確実性の強い現代社会において、そんな状態のスタートアップ企業は早晩墜落するのがオチでしょう。

それに、データがないとチーム内で議論をしていてもどうしても空中戦になりがちで、何時間かけても有意義な結論が得られません。
お互いに「自分はこう思う」という感性同士をぶつけ合い、言葉はすれ違い、人間一人一人の感性なんて最初から違っているので、いつまでたっても平行線が解消されない。
で、どちらかが折れて「そんなに言うなら、あんたの言う通りにやるよ(オレは反対だけどな!)」という一応の決着になるんだけど、片方にはただ不満が残るから、チームとしての一体感が損なわれる。

コレが繰り返されると、「あいつにはいくら言っても話が通じない」という心の壁が生まれていくわけで、数人やそこらしかいないスタートアップでこの状態に陥ると、良くて機能不全、悪くすれば会社自体が崩壊しちまうんでございます。あー怖。

そんな状態を回避するためにもデータを元に考えたり、話したりすることがとても重要な訳です。
お互いにデータを示しながら話せば、たとえば
「君のアイデアは既存ユーザの活性化には役立ちそうだけど、今一番問題なのは新規ユーザの獲得コストなんだ。だからこちらの施策をするべきだ」
「いやいや、この施策は新規ユーザの獲得コストを下げるのに有効なんだよ。過去のデータを見ると、このときに一番口コミが生まれて新規ユーザが多かっただろ?」
という感じに、根拠のあるフィードバックを互いに示しつつ、建設的な議論が行えますから。
何より、お互いの意見の違いや感性の違いを、感情のしこりを残さずに相互補完的、発展的に解消していきやすい。
ワーオ! データ・ドリブンって素晴らしいぜ!!

とまあ、こう書くと良いことずくめのように聞こえますが、当然データ・ドリブンにも欠陥はあります。

最大の問題は、データ・ドリブンは企業の差別化要因を生み出しにくい、という点でしょう。
スタートアップ企業は当然ながら、人員も資金も認知度も、既存の企業に比べたらミジメなほど脆弱です。当然ながら、集められるデータの量・質にも限界があります。

一方、今日の大手企業でデータを軽視するようなクレイジーなヤツらはそうはいないでしょうから、やはり同様にデータ・ドリブンで、それも多くのデータの中からより質の高い情報を取り、より確度の高い施策に、より豊富なリソースをつぎ込むってことをやってくるわけです。
もしもスタートアップ企業にそんな競合相手が現れたら、勝者がどちらになるのか、火を見るより明らかでしょう。データなんかなくっても。
※ちなみに弊社トークノートの競合相手は、SalesforceやらMicrosoftやらと、某漫画の四皇並に強大無比な面々が揃っております。うーん、エンジョイ&エキサイティング!!

飛行機の例に戻ると、計器をしっかり見据え、目的地までひたすら安全に飛行していればそれでいい既存企業と、墜落を回避しながらも空中三回転ばりのアクロバティック飛行を決めなければ勝利がおぼつかないスタートアップ企業ではそもそもとして前提条件が違うので、ただデータ・ドリブンであるだけでは不十分です。

むしろ普通の企業が「まさかそんなのムリに決まってる」とか「収支に見合うわけがない」と思うようなことを実際にしでかして、新たな道筋を"発明"してやる必要がどうしてもあるわけで、そういった道筋を見つけ出すためには、固定観念から逸脱して柔軟に発想していくことと、数多くの実験を繰り返す以外にない。

このとき、アイデアを発想していくフェーズと、それを実際に実験して評価していくフェーズがある訳ですが、アイデアを発想していくフェーズで既存のデータに過度に縛られたり、データがないからと言って新しいアイデアをしりぞけたりしてしまうと、スタートアップが本来的に必要としている逸脱を生み出すことができなくなってしまいます。

時には人間的な直感や感性が新たな道を切り開く可能性もあるってことを理解した上で、データ・ドリブンとは別にそういった行動原理も配分よく取り込んでいく必要があると思うんですよね。
言うなれば「考えるな、肌でつかめ」的ドリブン。『燃えよドラゴン』風味のブルース・リー駆動でございます。

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※『考えるな、肌でつかめ』と言っていた頃のブルース・リー。在りし日の思い出。

ただし、ブルース・リー駆動で生み出されたアイデアというものは概して極端に成功確率が低いし(当たり前だ!)、感性というものはその性質上、自らを言語的に説明する能力を持たないので、前述の通りチーム内のコミュニケーションでも問題を生みやすい。そのため、この配分には慎重を要しますが。

何の根拠もありませんが、個人的には2割か1割はブルース・リー駆動で動く余地を残しつつ、残りはきっちりデータ・ドリブンで意思決定していくくらいのバランスがスタートアップにはちょうどいいんじゃないかしらん。
ブルース・リーがあまりに強くなりすぎると、まさに死亡遊戯。截拳道(ジークンドー)のあまりの暴れっぷりに、我らのフライトは墜落を免れません。
といって、これがまったくのゼロになると、すっかり丸くなったブルース・リーがスクリーンの中でのんびりお茶をすすっている、なんとものどかでクソつまらない映画みたいなスタートアップ企業の出来上がりですよ。なんだ、お前は『ヴェニスに死す』かよ、ルキノ・ヴィスコンティかよ、クソ長くてクソ眠いんだよ、あの映画は!

・・・えー、ちょっと取り乱しましたが、
この辺りの黄金比を見つけ出すことが今日のすべてのスタートアップ企業においては急務であると、信ずるに至った次第です。

オレたちのチームは、その黄金比を見つけ出せるはずだ、と信じつつ、私はまた明日からの仕事に精を出すのでありました。
どっとはらい