IDEA and Players

ベンチャー企業で働く変なエンジニアが勝手なことを書きまくるブログ

変なエンジニア、2013 Feb, Startup Weekend Tokyoに参加する! 最終日の巻

Startup Weekend Tokyo体験記、今回でいよいよ最後となりました。
最終日、それは各チームの成果が問われる審判の日。
苦しみながらも、ついには失敗共有サービス「残念.me」を生み出すことになった我らのチーム「Shippai on the go」。
あまりにも残念なサービスと、そこに関わった残念な男女たちが描く感動のフィナーレw

というわけで、SWTokyo最終日の模様を、最後まで元気よくお届けして参ります!

涙のカスタマー・バリデーション!(青春編)

さて、世の大人たちからエッチな失敗談を集めて、それらの購読には課金するという我々の禁断のアイデア。
しかしながら、本当にこんなものを月額100円払って欲しいと思うような人々がいるのでしょうか? 私たちはそれを証明しなければなりません。

この難題を買って出てくれたのは、HastlerのJunさん。なんと、友達や後輩などに片っ端から電話して、とてつもなくハードなインタビュー調査をしてくれたのでありました。

「なあ、お前、童貞やん。もし初めてする機会が訪れたとしたら怖いやろ? ・・・いや、男はみんな怖いはずなんやって! それでな、もし大人たちのそういう失敗談を月額100円で聞けたとしたら、欲しいと思う?」

ってなインタビューを次から次へと電話ごしに仕掛けるJunさん。"童貞"という言葉が聞こえてくる度に、肩を震わせながら笑いをこらえるチームメンバーたち。
まったく、なんという過酷な試練でしょう!

しかし、その努力の甲斐あって、約3割近い学生さんが毎月100円課金してもよい、という調査結果が! なかには、1000円払ってもいい、という声まで!

この、若者たちの、狂おしいまでの声! 魂の叫び!
そのすべて、きっちり私たちのサービスで受け止めさせていただきます!

戦闘準備

Junさんが最後のカスタマー・バリデーションに死力を尽くす中、他のメンバーも最後の努力を重ねていました。
HastlerのHiroさんとHackerのYuheiさんらは着々とプレゼン資料の作成。
本来なら、私がプレゼンすべきなのかもしれませんが、昨晩の徹夜がたたってすでにフラフラ。さらには、MVPのブラッシュアップ作業が若干残っていたため、Hiroさん/Yuheiさんの二人組にお願いしたのでした。しゃべりならまかせておけ、という風のHiroさん。じつに頼もしい!
そしてWebのデザインに妥協を許さないO女史が次々と指示する修正に、ヒーコラ言いながら手を動かし続ける私。

まあ、そんな感じでタイムアップまでの残り少ない時間、チーム5人が一丸となりながら、しかも終止笑いを絶やすことなく作業を続けたのでありました。

・・・まったく、おまえら最高だぜ!!


※最後の作業にいそしむチームの仲間たち。みんな若干疲れているものの、ずっと和気あいあいとしてました、ホント。

決戦のとき!

そして、とうとう最終プレゼンの時間になりました!
ルールはきわめて単純。5分のプレゼン、審査員による5分の質疑応答。
そして、最後に審査員による投票によって優勝チームが決まる、というわけです。
まあ、このとき熱い戦いの模様は、こちらのまとめを参照していただくとして・・・

じつは私、このプレゼンのずっと前から、自分でたった一人、密かに考え続けてきたことがありました。

なぜ我々は、自分たちのサービスにおいて、"学び"ではなく"共感"、しかも"笑い"を中心に据えたのか?

これは自分たちがもっとも悩んだ問題であり、そして、必ずこの点を審査員に突っ込まれるだろう、と踏んだのでした。
当然でしょう。この競争の激しい現代社会においては、ごく一般的には"学び"は"笑い"よりも崇高で、価値の高いものとされているのですから。
しかし、私たちが選んだのは別の答えでした。それはなぜか?

三日間の間、さんざん考え続けた末に、私が導きだした結論はこうです。

たとえ、私がSteve Jobsの失敗を学んだとして、
孫正義の失敗を学んだとして、
あるいはその他のあらゆる先駆者、偉人たちの失敗を学んだとしても、
だれも私の代わりには失敗をしてくれない。

この一点こそが、私たちのサービスの根拠でした。

もしも未来において必ず成功できるとわかっているのなら、誰にとっても決断し、行動することはたやすいでしょう。
でも、残念ながら世界は不確実で、未来はつねに予測不可能なものですよね? どんなに学んだところで、それは変わらないはずです。
だからこそ本当に尊ぶべきは、成功か失敗か定かならぬ未来に立ち向かう私たち個人の勇気ではないでしょうか?

勇気を作り上げるものは何か?
それは、たとえ失敗しようとも、それを受け入れ、笑い飛ばす、という心構え。
これが私がたどり着いた答えでした。

・・・ふっふっふっ、完璧ですね。どんな審査員もこの答えを聞いたら、ぐうの音も出ないでしょう。
私が心の中でひそかに勝利に酔いしれたとしても、無理からぬというもの。

そうこうするうちに、とうとう私たちのプレゼンの順番が回ってきました。

そして、このとき使用したYuheiさん作「残念.me」渾身のデモ・ムービーがこちら!!
その1 その2

Hiroさんのユーモア、というか自虐ネタ(笑)あふれる力の入った5分間のプレゼンが終わったところで、いよいよ審査員の方々から質問が浴びせられる段となりました。


※最終プレゼンを終え、審査員との質疑に応じるチーム「Shippai on the go」の面々。

なお審査員の錚々たる顔ぶれについては、こちら

早速、審査員の伊藤 健吾さんからは次のような鋭い質問が飛びました。

伊藤さん「失敗を共有するためサービスを、あらためてSNSとして作る必要性があるのか? それは2ちゃんねるNAVERまとめでも出来ることではないのか?」
思わず、Hiroさんの手からマイクを奪い取って言い返す私。
藤井「必要性はあります。ぼくたちが作り出したいのは共感の場であり、失敗を通じて自己承認が行える文化を作り出したいんです」
伊藤さん「2ちゃんねるNAVERまとめでも、読んだ人からレスポンスがもらえるし共感を示してもらえる。その結果として、投稿者の承認欲求が満たされているのは変わらないのでは? SNSにする理由にはならない」

・・・ぐぬぬ、手強い。
たしかにそこまで突っ込んだカスタマー・バリデーションは行っていませんでした。
もともと私は実名制の失敗共有サイトが作りたいと思っていたんですよね。自分の失敗を積極的にオープンにしていくことで、結果としてそれがセルフ・ブランディングにつながっていく、そんな価値が提供できれば、と考えていたわけです。

しかしながら、アンケート調査ではやはり匿名の要望が強かったので、実名制を全面に押し出す勇気がなかったのです。そして匿名であるならば、SNSよりも2ちゃんねるのようなサービスのほうがよっぽど親和性があるでしょう。
SNSである必要性があるのか? その点は検証できていない、と私は認めざるをえませんでした。

そして、次の審査員・Gengo CEOのロバートさんには第一声、こう言われました。
「Are you serious!?(君、マジなの?)」

この質問に思わず私もニヤリ。
そういう反応こそ、私が期待したものだったからです。

「Of course! I'm very serious!!」

そう言い返したらロバートさん、「O.K.」とだけ言ってマイクを置いちゃいましたよ。
なんという肩すかし。なんなの、この人のお茶目っぷりはw

次にスローガン代表取締役の伊藤 豊さんからの質問。

「失敗というと、ユーザがそこから何かを学んで成長していくサービス、という方向性もあると思うんですけど、どうしてそちらには行かなかったのでしょう?」

来た!
ついに来ました! とうとうこの質問がっ!!
自然とマイクを握る私の手に力が入ります。

「・・・その点は、まさに私たちがもっとも悩んだところでした。ですが、この三日間でぼくが出した結論はこうです・・・たとえ人がどれだけ学んだとしても・・・っ!!!
と、私が声を張り上げようとしたまさにそのとき。

「はい、5分終了〜〜〜〜〜〜」と、進行役の李さんの声。

NOOOOOOOOOOOOO!!!! なんという残念ミー!!!

・・・こうして私たちの戦いは終わりを迎えたのでありました。

戦いの後

というわけで私たちの「残念.me」、サービスの名前通り残念な結果となってしまいました。
審査の後でこっそり審査員の伊藤 健吾さんに「ぶっちゃけ、ぼくたちのサービスの反応ってどんな感じでした?」と聞いたところ、「正直、話にも上らなかったよ」と即答されました。がびーーーーんw


最後に皆で乾杯

それはさておき、優勝したチーム「COOK MATCH」の皆様、おめでとうございます!

「COOK MATCH」のメンバーからお話を聞いたところ、リーダーであり、エンジニアでもあるTaoさんのアイデア、およびビジョンからは一度もぶれる事なく、メンバーそれぞれがひたすら自分たちの作業に集中することができた、とのこと。元々のアイデアの完成度もさることながら、チームの結束力、まったく見事なものです。
おくればせながら心から祝福を申し上げます。

そして、私たちのチーム「Shippai on the go」の面々。
優勝できなくて残念だったかって? そりゃあもう。
でも、チームの仲間たちは晴れやかに笑っていました。それもそのはずです。
だって、私たちはこの三日間、ずっと笑い続け、そして楽しみまくっていたんですからね。

この程度の失敗、"残念.me"に投稿して笑い飛ばし、そしてまた次へと向かっていくだけのこと。
そういった心構えこそ、私たちの"残念.me"で作り上げたかった価値であり、私たちがStartup Weekendで学んだスピリットでした。

最後に

というわけで、たった54時間の、目が眩むほど忙しい、しかし夢のような時間が終わりました。
いや、正確には終わっていませんね。Startup Weekendで過ごした時間は、参加者が起業家になるための最初の数日間でしかないのですから。
ともあれ、ものすごく充実した時間に一区切りがついたのです。

ブログ上から恐縮ですが、この素晴らしい体験を提供してくれた関係者の皆様、つまり、オーガナイザー、メンター、審査員、それにイベントの参加者の皆様に心から感謝を捧げます。本当にありがとうございました。

そして、もちろん三日間、一緒に戦ってくれたチームの仲間たち。Hiroさん、Yuheiさん、Junさん、O女史。
世にもふざけたアイデアにも真剣に挑戦してくれる、そんな素晴らしいチームに出会えたことを私は誇りに思います。
ありがとよ、てめーら!!

さて、この体験記の最後は、その日の夜、私たちが交わした合図で締めくくることにしましょうか。
その夜、有志によって開かれた打ち上げ会で、私たちはこんな素敵な言葉で乾杯したんですよ。

HAPPY LOSER!!
ってね!