IDEA and Players

ベンチャー企業で働く変なエンジニアが勝手なことを書きまくるブログ

変なエンジニア、2013 Feb, Startup Weekend Tokyoに参加する! 二日目の巻(後編)

前編からの続き。
「失敗共有サービス」という未踏の地を目指しながらも、マネタイズに苦しむチーム「Shippai on the go」の仲間たち。
そして、禁断のビジネスモデル・「めぐみ」の隠された秘密とは!?
彼らの魂は希望への光を見出すことが出来るのか!? はたまたマネタイズの暗い誘惑に囚われ、暗黒面へと落ちてしまうのか!?


※チーム「Shippai on the go」たちの心の葛藤。(イメージ画像)

・・・とまあ、てきとーに盛り上がってきたところで、Startup Weekend Tokyo体験記、引き続き二日目の後編をお届けします。

恐怖のカスタマー・バリデーション!

「失敗共有サービス」の軸を、"学び"ではなく"共感"に大きく舵を切った私の決断に、チームの皆はわりとすんなり納得してくれました。
まあ、「『そんなビジネスモデルは人として間違ってる!』って最初に言ってたのだれ!?」みたいな声は少し上がりましたけどもw
しかし、進むべき道が定まったとすれば、次にやるべきことは自ずと明らかになっていくものです。

スケジュールのほぼ半分を使い切った今、いつまでも議論ばかりしていられません。そろそろ行動に移るべき時です。
すなわち顧客検証、カスタマー・バリデーションの時間です。

その前に、ここまでの状況をおさらいしましょう。

私たちのチームが見込んだ収益の柱は二つありました。

収益源1:書籍化ビジネス
収益源2:失敗に対する見舞金からの手数料徴収

このために検証すべき仮説は、大体、下記のようになるでしょう。

仮説1:ユーザは他人の共感を求めて、自分の失敗をインターネット上に公開してくれる。
仮説2:ユーザは他人の失敗に対して小額の寄付をしてくれる。
仮説3:ユーザから集めた失敗談を、出版社に持ち込めば本にできる。

これらを現実世界にぶち当たりながら、ひとつひとつ検証していかなければならないわけですが・・・さてさて、どんな答えが出ることやら。

仮説1・仮説2についてはインターネット上でのアンケート、および、通行人へのインタビューが有効でしょう。
通行人へのインタビューという、そこそこハートの強度を要求される役目は、ガチ関西人のHastler二人組、Hiroさん(40才独身)、Junさん(23才リア充)が買って出てくれました。なんという頼もしい男たちでしょう!
そんな勇敢な二人の背中を、私が最敬礼で街へと送り出したのは言うまでもありません。


※インタビューのため、街中へと突撃するHiroさん、Junさんの二人。(イメージ画像)

さらにインターネット上でのアンケート活動については、HackerらしくYuuheiさん(沖縄出身)が担当。そして私は仮説3の検証について手立てを尽くす、と決めました。
が、残るO女史がここでまさかの一時離脱。じつはイベント全体でDesignerの数が圧倒的に足りなかったため、他のチームのお手伝いを引き受けたO女史なのでした。
おおっ! マネタイズ、マネタイズと口うるさい割には、意外に情に厚いじゃないか! 心の中でひそかに守銭奴呼ばわりしてすまんかった!

VOWの編集者に突撃

Startup Weekend Tokyo開催時、世間一般は連休のど真ん中でありました。そのため、出版社に問い合わせようと思っても大抵の会社はお休みです。
事実、VOW出版元の宝島社に電話をかけても、自動録音のアナウンスが流れるばかり。
そこでWikipediaVOWの項を調べ、関係者について確認。その中に編集者の方のお名前があったので、それをググって、まずはブログを発見。さらにTwitter上でその方のアカウントを見つけることに成功しました。
うーん、こうやって書くと、明らかにストーカーですね。相手が年配の男性でなかったら誤解を受けてしまいそうです・・・。

そんなわけで、早速Twitter上でインタビューの申し込みを敢行!

待つこと数時間・・・、なんとTwitter上で返信が!

ごもっともです・・・。
すいませんでしたっ!!
 

街中インタービュー、その後

そうこうするうちに、インタビューに向かった二人が無事、生還しました。しかし、その表情はどこか暗い。
二人がしてくれたインタビュー結果についてまとめると、大体、こんな感じ。

・サラリーマン風のお兄さんに突撃!
 なんか二十代くらいの男性。明らかに迷惑そうな感じ。
 「SNS、使ってますか〜?」って聞いたら「使ってない」と言う。マジか!?
 「自分の失敗を他人に話したいと思いますか〜?」「思わない」
 「最近、友達とかから失敗談を聞いたことありますか〜?」「別に」
 「他人の失敗にお金を払ってあげてもいいと思いますか〜?」「思わない」
 ありがとうございました。

・女性二人組に突撃!
 なんだかお互いの関係がよく読めない感じの、女性の二人組。
 話しかけようとすると、「今、忙しいから!」と断られた。
 ありがとうございました。
 
・人当たりの良さそうなおばさんに突撃!
 北海道から娘さんのところに遊びにきたらしい。
 自分の失敗について他人に話してもいいと思いますか?と聞いたら、相手によるけど身近な人にならかまわない、とのこと。
 また、このおばさん、実際に最近あった自分の失敗談について話してくれました。なんという、いい人でしょう!
 「なんのために自分の失敗を人に話すんですか?」という質問には、「なんとなく共感とか、同情してもらえれば嬉しい程度」という返答。
 そして最後、「他人の失敗に対する同情の気持ちとして、お金を払ってもいいと思いますか?」という質問に対しては、こんな意見が。
 
「なんでもお金で解決しようとしてはいけない。人として、それは間違っている」

 真剣に叱られてしまいましたw でも、じつに真っ当なご意見ですね!
 ありがとうございました。

・中学生の女の子に突撃!
 なんか人待ち風中学生の女の子。
 ・・・というか、このご時世、この年頃の女の子に話しかけるなんて・・・。Hiroさん、Junさん、あんたら勇者だよ!
 「Facebookとかやっている〜?」という質問には、「やってます」との答え。中学生でも、Facebook!?
 さらに質問しようとしたところで、どこからともなく現れた、お出迎え用の黒塗りBMWが女の子の前に停止。 ・・・怖っ!!!
 Hiroさん、Junさんの二人は撤退を余儀なくされました。
 ありがとうございました。

アンケート調査結果

さらにインターネット上で募集したアンケート調査の結果がこの頃になると段々明らかに。
大体、調査結果をまとめると以下のような感じになりました。

・自分の失敗を公開しても良いか?
 半数以上の人が別にかまわない、と思っていました。まあ、内容によると思いますが。

・失敗を話すとき、相手にどういう反応を期待しているのか?
 共感してもらえれば嬉しい、という意見が多かった。一部、相手の学びになればいい、という意見も。
 
・他人の失敗にお金を払ってもいいと思うか?
 ほぼ全員が「思わない」。

調査結果を踏まえると、禁断の黒魔術「めぐみ」モデルはこれっぽちも機能しそうにありません。
うーむ、日本人の心は美しいなー(遠い目)

メンタリング

さて、Startup Weekendの二日目には、メンターの方々と面談する機会が各チームごとに与えられます。つまり、ビジネスアイデアについて直接、いろいろと意見がもらえるわけですね。
このメンターの方々がじつに錚々たる顔ぶれで、「失敗を共有して笑い飛ばす」というふざけたアイデアにどんな反応が返ってくるのか、いささか不安になりました。
これまでのカスタマー・バリデーションの結果を考えると、なおさら憂鬱な気分に。


※メンタリングを受けるチーム「Shippai on the go」の面々

ともあれ、自分たちのアイデアをメンターの皆様に説明してみましたよ。
すると・・・。

「そんなもの、FacebookTwitterでやればいい」
「そういうサービスは別にあってもいいけど、無くても困らない」
「学びのための失敗共有ならまだわかるけど、共感と言うとただ、おたがいの傷をなめ合っている感じしかしない」
「失敗に対する寄付というのは、日本の文化にそぐわない。いっそイスラム圏の20億をターゲットにするくらいじゃないと」

見事なまでにフルボッコw
メンターの皆様、貴重なご意見、本当にありがとうございました。

迷い、そしてピボットの誘惑

メンターとの面談、および、カスタマー・バリデーションの結果を受けてしょんぼりとするチーム一同。
だめだ、やはり「めぐみ」モデルは無理だったんです。となると、また一からビジネスモデルを考えなおさなくてはいけません。さようなら、「めぐみ」・・・。

「やっぱり"共感"の軸だとマネタイズは無理なんじゃ・・・」チームの中の誰かが、ぽつりと言いました。
すっかり弱気になっていた私も、その言葉に力なくうなずくしかありません。

「そうだな・・・。やっぱり、無理だ・・・」と、私。「ごめん、オレが悪かった・・・。すまないけど、もう一度最初から考え直してみよう。"学び"の軸でどんなビジネスが作れるのか、みんなで考えてみよう」

と、またまた方向転換を決める私。まったく無責任なヤツです。

「やっぱりターゲット層はしぼったほうがいい。就学生は必死だから情報を求めているはず」
「OBから就職活動の失敗談を聞けるならニーズが高いのでは?」
「面接時に、お互いに気をつけるべき情報を交換し合ったらどうだろう?」

その頃には再度、チームに再合流したO女史を含めて、みんなから次々と意見が出されました。そして、30分もしないうちに「就職活動している学生向けの情報交換サービス」というビジネスの青写真が完成。
じつに"ワークしそう"なビジネスモデル。さっきまで散々悩んでいた事がまるで嘘のように、あまりにもさくっと出来上がったので、チーム一同、呆気にとられたようにホワイトボードを見つめました。

「これ、上手くいきそうじゃない?」「うん、何の問題も感じられないな」などと、口々に言います。その点について、私も同意せざるをえませんでした。

私はチームのみんなの顔を見回すと、「じゃあ、みんな、このビジネスに賛成だな? だれも反対しないんだな!?」と聞きました。仲間たち全員が一様にうなずきます。
「よし、わかった、じゃあ、これで・・・いや、やっぱりダメだ」と、私。
その言葉に、は?という表情を浮かべる仲間たち。
私は思わずホワイトボードを殴りつけながら、言い放ちました。「このアイデアはクソだっ!!」
私にはどうしても受け入れられませんでした。さながら、テスト用紙に書き込まれたような模範解答のような、そのアイデアが。
誰も反対しようのないほど理路整然として、クレイジーさのかけらもないアイデア。

間違いなくこれだけはハッキリ言えます。
そんなもの、クソに決まってます。

覚悟、そして奥の手

そろそろ日が暮れ始め、あと数時間もすればSWTokyo二日目が終わります。そんな中、私たちのチームで決まっている物と言えば「残念.me」というサービス名だけ。
残り時間を考えると、もう後戻りは許されません。さんざんブレまくった私ですが、もう「共感」から照準を外す気はありませんでした。
マネタイズをどうすべきかはさておき、「共感」を軸とした場合のサービスがどのような形になるのか、おおよそイメージすることはできます。そこで見切り発車的に、MVP(Minimum Viable Product)の作成に着手することに。

ここでO女史がDesingerの本領を発揮。すさまじい早さでWebのデザインを組み始めます。
私とYuuheiさん、Hacker組はコーディング作業。
それらの作業と平行して、Hastlerのお二人、Hiroさん、Junさんには、とにかく共感ベースで収益を上げるアイデアがないか、ブレストして考え出す、という難題が与えられました。


※ブレスト中のHiroさん、Junさん

禁断のビジネスモデル(またか!?)

どんどん時間が過ぎ去って行く中、私たちの焦りが募っていきます。
しかしそんなときにこそ、道は開かれるというもの。やがて、Hastler二人によってひとつの画期的なアイデアが出されました。
それは人類が太古より恐れ、かつ求めてやまなかったもの。すなわち、18禁です。

要は、ちょっとエッチな体験談も集めて、それらは有料コンテンツにするというアイデアです。
しかもお値段は一ヶ月、たった100円ぽっきり。おこづかい制のお父さんにも朗報です!

これだ、間違いない!
世のチェリーボーイが、先人たちの失敗を聞きたくないはずがない!
「大丈夫、オレだってこんな失敗をしてきたんだぜ・・・」みたいな話が聞けるとしたら、どれほどの若者たちの心を救えるでしょうか?
ちなみに、私も26才まで童貞だったクチですが、その当時にこんなサービスがあれば絶対に課金していましたよ!(断言)
そして、昨今の日本の少子化問題、さらには、年々、男性の童貞人口が増加している社会情勢を鑑みれば、これほど成長が見込めるビジネスはちょっとないんじゃないか!
参考資料:未婚者、童貞36.2% 処女38.7%

しかし、当然ながら反対意見も出されました。「そんなサービス、恥ずかしいよ!」とね。
沖縄出身のYuuheiさんなんかは、前回参加したStartup Weekend Okinawaの結果に満足していなかったらしく、今度こそはという思いで今回参加されていたわけですが、そこで発表するのが「童貞のための失敗共有サービス(あはーん)」とあってはさすがに名折れと言うもの。いや、気持ちはわかります。

私はそんなチームの仲間を奮い立たせるために吼えました。
「てめーら、空を飛びたくねーのかよっ!! 一緒に飛ぼうっ!! このStartup Weekend Tokyoでっ!!!」

結論が出ました。
私たちの「残念.me」、その誕生の瞬間です。

「・・・いやあ、この結論にたどり着いちゃうこのチーム、すごくないですか?」
その日の夜、別れ際に残したJunさんの言葉が今でも忘れられません。

徹夜作業

アイデアは固まったものの、MVPであるWebサービスを明日のプレゼンまでに完成させなければなりません。
幸い、O女史がWebデザインをあらかた完成させてくれていました。他のチームのデザイン作業も手伝っているというのに、この仕事の速さ。さすが、マネタイズ女王!
あとはアプリケーションを実装するだけ。ここはHackerの腕の見せ所というものです。

「藤井さーん、後はよろしく頼んますねー。徹夜でやって下さいねー。私は、きっちり眠るんで!」と、O女史。
そして、HackerであるYuuheiさんも含め、他の仲間たちもあっさり帰宅することを決定。ちょっと待て、オレ一人で全部やれってか!?

でも、いいんです。自分で言い出したアイデア、最後は自分でケツを持つ。これこそケジメ、というものです。
エンジニアとして、まさに本望と言えるでしょう。
夜が更けていく中、愛用のMacbook Airと向かい合いながら、何度も自分にそう言い聞かせる私でありました。


※徹夜でコーディングする私の姿。(もちろんイメージ画像)

(最終日に続く)