IDEA and Players

ベンチャー企業で働く変なエンジニアが勝手なことを書きまくるブログ

変なエンジニア、2013 Feb, Startup Weekend Tokyoに参加する! 二日目の巻(前編)

前回のブログの続きです。
Startup Weekend Tokyo体験記、二日目の分をお届けします。
でもその前に、前回のブログを読んでいない方のために一応あらすじを。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ※BGM: ST●R W●RSのOP曲
脱・SW童貞のために立ち上がった一人の勇者・オレ。
そしてオレに導かれ、数奇な運命を経て集結した四人の男女(被害者)たち。
彼らに課せられた使命。それは「失敗を共有し、共感し、笑い飛ばす」という前代未聞のサービスを作り上げること。
待ち受ける幾多の困難を前にして、彼らの胸に去来する思いは、愛、友情、はたまた悔恨の涙か!?
さあ、彼らの運命や如何に!? どどーん

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

・・・調子に乗りました。ごめんなさい。

冗談はさておき。
SWTokyo二日目は、このイベントの全日程の中で私たちチームがもっとも悩み、苦しみ、迷い続けた一日でした。
そういう意味ではこの日、私たちはもっともStartup Weekendらしい時間を過ごしたと言えるかもしれません。
他のチームの方々がどのような思いで過ごしたのかは我々が知る由もありませんが、案外みんな同じような気分を味わったんじゃないでしょうか?

あまりに濃密な時間を過ごしたため、この体験記のブログも二日目だけは前編・後編に分ける必要がありました。あらかじめご了承ください。
ともあれ、我ら「Shippai on the go」チームの面々が初日の深夜から二日目に辿った軌跡をお届けしたいと思います。

最初の問題:「失敗共有のニーズはあるのか?」

初日のチーミング終了後、我らチーム一同は会場付近の居酒屋に移動。乾杯もそこそこに、さっそく作戦会議をすることに。
当然ながら、最初に私たちが立証しなければならない仮説はコレ。「ユーザは失敗を共有したいのか?」

「失敗は誰にとっても恥ずかしいもの。それをわざわざ人目に晒すヤツなんているのかよ!?」
もっともな疑問です。これまでの人生で失敗慣れしている私はだいぶ平気ですが、その感覚を人に押し付けるのは独りよがりというものでしょう。
そこで、まずはチーム内で決を取ってみることに。

「この中で自分の失敗を他人に話して平気なヤツはいるの?」と聞くと、私、そして関西系三人組のHiroさん、Junさん、O女史が迷うことなく挙手。ひとり、沖縄出身のiOSプログラマー、Yuuheiさんだけが手を挙げず。「え、だって恥ずかしいじゃんw」と常識的な反応です。

しかしながら、この通り、調査結果を踏まえると、80%の割合で失敗について許容的な人々がいることがわかりました・・・。
・・・って、ちがう!
このチームの面子は特異すぎる!

ほとんどが関西系! こいつらなら笑いを取るためならスカイツリーの上からだって飛び降りかねない!(偏見丸出し)

というわけでここは明日、街中に繰り出してみて、その辺の人にインタビューしてみようじゃないか、ということに相成りました。
ま、当然ですな。

第二の問題:「マネタイズはどうするか?」

さて、インタビューをするにしてもそれなりにしっかりとした質問を用意しておかないと、正しい回答が引き出せないだろう、と考えた私たちは質問のシナリオについてあれやこれやと話し合いました。
ところが、それまでオニオンリングをぱくついていたO女史が突如、怒ったように言い放つじゃありませんか。

「だ・か・ら〜、マネタイズはどうすんのよ? 言っとくけど、ちゃんとビジネスモデルを考えておかないと、ぜったいに優勝できないよ!? いいの、それで?」

さすがStartup Weekend Osaka前回優勝者のO女史。このイベントを知り尽くした者のならではの発言です。その言葉の重みに残りの一同は思わず頭を抱えました。そりゃあ、そうでしょう。あたかも鉛を黄金に変えるがごとく、失敗をお金に変える方法がそう簡単に思いつくようなら、誰も苦労なんかしませんて。

書籍化ビジネス

しかし、じつを言うと、ビジネスモデルのアイデアがまるでなかったわけではないんですよね。このほんの少し前、会場で知り合った親切なフランス人、Madjidことマジさんがこっそり教えてくれたのが、フランス発の類似サービス、
VDM(http://www.viedemerde.fr/)

VDMは失敗談をユーザから集めて、本として出版したり、アプリにしたりして儲けているとのこと。おおっ、ぴったりじゃないか!
この話を聞いて自然と思い出されたのが、日本は宝島社が出版している「VOW」という超有名な本。


※「VOW」についての詳しく知りたい方はこちら:http://portal.nifty.com/2010/06/09/d/

ユーザから愉快な失敗談を集め、こんな風に書籍化して儲ける、というのはどうだろうか?と、私たちも当然、考えたわけですよ。

しかし、このアイデア、どうにもインパクトが弱い。
本屋の売り上げがこれだけ低迷しているこのご時世、書籍化で儲けるってのはあまりにも心許ない商売です。
たとえアプリとして売るにしても、そんなに太い儲けになるとは到底思えません。

禁断の「めぐみ」モデル

やはりここは、何としてでも斬新かつ強力なビジネスモデルを考え出さなくてはなりません。
というわけで、誰ともなく発案した禁断のアイデア。それが「めぐみ」モデル、別名「投げ銭」モデルでした。


※「投げ銭」と言えばもちろんこの人w

他人の失敗に、人ならば誰でも少しくらいは同情するでしょう。いや、当然するはずです、人として!
ならば、そういった失敗に対して善意の寄付をしてくれる人だっているかもしれない!

いや、何も大きな金額じゃなくてもいいんです。百円とか、十円とか、小さな気持ちでいい。
それを投げ銭的に、失敗の持ち主の心を癒すために「めぐんで」あげる。
「めぐんだ」人には相手に対するちょっぴりの優越感。失敗を投稿した人には少しのお金。そして、運営側はそこから手数料をいただく、と。

やった、究極のビジネスモデルができたーーーーーーっ!!!

しかし、ちょっと待て! なんだかやっていることが賽銭泥棒みたいじゃないか?
善意の寄付金から一部をちょろまかす、そんな義援金詐欺みたいな行為が許されるのか? 人として!

そんな良心的な声がメンバーの間から自然と持ち上がったのは言うまでもありません。
産声を上げる間もなく、この黒魔術は封印されることになりました。

だめだ、やはりビジネスモデルが見つからない・・・。

とにもかくにも、多くの課題を残したまま、我々は翌日早朝の集結を約し、各自家路に着いたのでした・・・。

特捜指令!ビジネスモデルを探せ!!

二日目の早朝、SWTokyoの会場が開く前、少しでも多く作戦を練ろうと、都内某所に再び顔を揃えた「Shippai on the go」の仲間たち。
この日に行う予定だった通行人への突撃インタビュー、その質問内容などを一通り確認し終えた後、私たちの話題は自然と「ビジネスモデルはどうするか?」という問題に移って行きました。

「だから言ったでしょ! このアイデアはマネタイズがクソすぎやって!」と、相も変わらず念仏のように言い続けるO女史。えーい、まったくうるさいヤツだ。
「だから、なんとかなるって言ってるだろーが!」と虚勢を張って言い返す私。しかし、昨晩までの自信はとうに消え失せ、自分でもその言葉に説得力があるとは思えるはずもなく。
チームそろって会場に向かう電車の中でも、私の頭の中は、マネタイズ、マネタイズ、とただそればかりに。まったくこれまでの人生、これほどまでにお金儲けについて考えたことがあったでしょうか?

共感 vs 学び

二日目のイベント開始。早速、自分たちのチームの席を確保すると、引き続きビジネスモデルについて議論が続きます。
ここで「失敗共有サービス」というネタが私とかぶっていたという、Junさん(23才・リア充系男子)が口火を切りました。

「ぼくがやりたかった失敗共有って、なんか笑いとかそんなんじゃなくて、失敗を学びに変えて人を成長させる、とかそんなコンセプトだったんですが、そっちのほうがマネタイズしやすいんじゃないですか?」

・・・何という大人な発想。そして何という的確な意見。とても十才以上も年下の男とは思えません。

この発言を受けて、チームのみんなからは次々とアイデアが出されました。

・著名人の失敗談なら、みんな聞きたいだろうから課金してくれるんじゃないのか? たとえば孫正義とか、ホリエモンとか。
・就活とか婚活のようにニーズが高そうな領域の失敗談なら、ユーザが課金してくれるんじゃないのか?
・失敗のデータを大量に蓄積できたら、マーケティング会社とかに売れたりしないか?

などなど。

ビジョン vs マネタイズ

うーむ、たしかに"学び"を軸にした方が芽がありそうな感じがあります。
しかしながら、その分なんだかお固い感じにもなってきました。

サービスから「笑い」要素がなくなってしまえば、それは私が本来抱いていたビジョンとは少し違ったものになってしまいます。
私はこの世界を駆動させている根本原理は、人間の感情とか共感とか非言語的な何かだと思っているので、そこに踏み込むようなサービスを作りたいとつねづね思っていました。
しかし、そういった不確かなものを相手にすると、確実なマネタイズを考えるのがどんどん難しくなってしまうのも、また事実。
ここは背に腹は変えられない、と私は自分に言い聞かせましたよ。

さらなるアイデア出しをメンバーに任せ、私はひとまず、ユーザから集めた失敗データがマーケティング用の商材として売る事ができそうなのか、会場にいる人々に聞いて回ることに。
他のチームを順繰りに回って「すいませーん、マーケティングに詳しい人、いないっすかー?」と聞いていきました。こうやって書くと、なんだか酒屋が注文でも取っているみたいですね。傍目にも怪しいおっさんが、作業中の皆様を煩わせた事、この場を借りてお詫び致しますw

そうやって数人の意見を頂戴した後、さらにもう少し粘ってみようとして、最後にお話を聞いたのがSWTのオーガナイザー、グプタさんでした。
グプタさん、じつはピッチの時から私のアイデアを面白いと思っていたとのこと。なんとも嬉しい限り。

そしてこのときの会話は、私にとって非常に印象に残るものとなりました。グプタさんが私に話してくれたことをなるべく正確に書き起こしてみます。

「今の時代、情報がどんどん簡単に手に入れられるようになっているでしょう? だから、知識とかそういったものは、どんどん価値が下がっていると思います。
 失敗について言えば、すでに東大の先生が失敗学のデータベースを作って無料で公開してます。
 それに、失敗について学びたいなら人は伝記とかの本を読むことのほうが多いでしょう。そういったものが競合相手です。だから、サービスの方向性を"学び"に向けるのは私はオススメしません。
 ハードルを上げてしまうかもしれませんが、共感とか非言語的な価値を掘り起こしていったほうが可能性は膨らむと思いますよ」

自分がもやもやと考えていたことを、誰かがさらっと説明してくれたときの爽快感、経験したことがある人にならきっとわかってもらえるでしょう!
私はグプタさんに手短にお礼を言うと、急いでチームの元に戻り、自分の決意をみんなに伝えました。

「ごめん、やっぱ、笑いだ! 共感をベースにしたサービスでもう一度、考え直そう!」


※その時のチームの反応。しかも四人分。

「・・・で、マネタイズは?」と、呆れたような顔をしてO女史。まったく、お前の興味はそれだけか?

私は少し考えてから、口を開きました。
「・・・こうなったら奥の手だ。

黒魔術の封印を解く!

一同「エーーーーーッ!?」

(後編につづく)