IDEA and Players

ベンチャー企業で働く変なエンジニアが勝手なことを書きまくるブログ

データ・ドリブンと『燃えよドラゴン』的ドリブンの黄金比について

最近、平日の仕事中はがーっとプログラムばかり書いていて、一日の終わりには目はしょぼしょぼ、血が上りすぎて頭が重い、もうPCの画面なぞ見たくないってモードになり、休日も大体そんな調子だったのであまりブログを書く気分じゃなかったんですが、ひさびさに書きたい欲求がふつふつと沸き上がってきたので、ひさびさに休日もMacBookAirを開くことに。
中年プログラマー37歳、とある夏の日の出来事でございます。

最近、弊社トークノートではもっとデータを見ていこう、お互いにデータを示し合いながら議論していこう、という気運が高まっていて、そのためにMixPanelを本格的に導入したり、Google Analyticsのイベントを入れこんだり、とあれこれ数値を取る機会がこれまで以上に増えてきました。

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※MixPanelを導入したら太平洋をはるばる超えて、サンフランシスコからCoolなTシャツが送られてきました。「I AM DATA DRIVEN 」思わず感動。

今日のスタートアップ企業においては、データで思考する、というのは言わばイロハのイであって、出来ていて当たり前、出来ていなければ・・・言うなれば飛行機が視界ゼロ、計器一切なしという状態で操縦されているようなものです。
刻一刻と状況が移り変わり、不確実性の強い現代社会において、そんな状態のスタートアップ企業は早晩墜落するのがオチでしょう。

それに、データがないとチーム内で議論をしていてもどうしても空中戦になりがちで、何時間かけても有意義な結論が得られません。
お互いに「自分はこう思う」という感性同士をぶつけ合い、言葉はすれ違い、人間一人一人の感性なんて最初から違っているので、いつまでたっても平行線が解消されない。
で、どちらかが折れて「そんなに言うなら、あんたの言う通りにやるよ(オレは反対だけどな!)」という一応の決着になるんだけど、片方にはただ不満が残るから、チームとしての一体感が損なわれる。

コレが繰り返されると、「あいつにはいくら言っても話が通じない」という心の壁が生まれていくわけで、数人やそこらしかいないスタートアップでこの状態に陥ると、良くて機能不全、悪くすれば会社自体が崩壊しちまうんでございます。あー怖。

そんな状態を回避するためにもデータを元に考えたり、話したりすることがとても重要な訳です。
お互いにデータを示しながら話せば、たとえば
「君のアイデアは既存ユーザの活性化には役立ちそうだけど、今一番問題なのは新規ユーザの獲得コストなんだ。だからこちらの施策をするべきだ」
「いやいや、この施策は新規ユーザの獲得コストを下げるのに有効なんだよ。過去のデータを見ると、このときに一番口コミが生まれて新規ユーザが多かっただろ?」
という感じに、根拠のあるフィードバックを互いに示しつつ、建設的な議論が行えますから。
何より、お互いの意見の違いや感性の違いを、感情のしこりを残さずに相互補完的、発展的に解消していきやすい。
ワーオ! データ・ドリブンって素晴らしいぜ!!

とまあ、こう書くと良いことずくめのように聞こえますが、当然データ・ドリブンにも欠陥はあります。

最大の問題は、データ・ドリブンは企業の差別化要因を生み出しにくい、という点でしょう。
スタートアップ企業は当然ながら、人員も資金も認知度も、既存の企業に比べたらミジメなほど脆弱です。当然ながら、集められるデータの量・質にも限界があります。

一方、今日の大手企業でデータを軽視するようなクレイジーなヤツらはそうはいないでしょうから、やはり同様にデータ・ドリブンで、それも多くのデータの中からより質の高い情報を取り、より確度の高い施策に、より豊富なリソースをつぎ込むってことをやってくるわけです。
もしもスタートアップ企業にそんな競合相手が現れたら、勝者がどちらになるのか、火を見るより明らかでしょう。データなんかなくっても。
※ちなみに弊社トークノートの競合相手は、SalesforceやらMicrosoftやらと、某漫画の四皇並に強大無比な面々が揃っております。うーん、エンジョイ&エキサイティング!!

飛行機の例に戻ると、計器をしっかり見据え、目的地までひたすら安全に飛行していればそれでいい既存企業と、墜落を回避しながらも空中三回転ばりのアクロバティック飛行を決めなければ勝利がおぼつかないスタートアップ企業ではそもそもとして前提条件が違うので、ただデータ・ドリブンであるだけでは不十分です。

むしろ普通の企業が「まさかそんなのムリに決まってる」とか「収支に見合うわけがない」と思うようなことを実際にしでかして、新たな道筋を"発明"してやる必要がどうしてもあるわけで、そういった道筋を見つけ出すためには、固定観念から逸脱して柔軟に発想していくことと、数多くの実験を繰り返す以外にない。

このとき、アイデアを発想していくフェーズと、それを実際に実験して評価していくフェーズがある訳ですが、アイデアを発想していくフェーズで既存のデータに過度に縛られたり、データがないからと言って新しいアイデアをしりぞけたりしてしまうと、スタートアップが本来的に必要としている逸脱を生み出すことができなくなってしまいます。

時には人間的な直感や感性が新たな道を切り開く可能性もあるってことを理解した上で、データ・ドリブンとは別にそういった行動原理も配分よく取り込んでいく必要があると思うんですよね。
言うなれば「考えるな、肌でつかめ」的ドリブン。『燃えよドラゴン』風味のブルース・リー駆動でございます。

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※『考えるな、肌でつかめ』と言っていた頃のブルース・リー。在りし日の思い出。

ただし、ブルース・リー駆動で生み出されたアイデアというものは概して極端に成功確率が低いし(当たり前だ!)、感性というものはその性質上、自らを言語的に説明する能力を持たないので、前述の通りチーム内のコミュニケーションでも問題を生みやすい。そのため、この配分には慎重を要しますが。

何の根拠もありませんが、個人的には2割か1割はブルース・リー駆動で動く余地を残しつつ、残りはきっちりデータ・ドリブンで意思決定していくくらいのバランスがスタートアップにはちょうどいいんじゃないかしらん。
ブルース・リーがあまりに強くなりすぎると、まさに死亡遊戯。截拳道(ジークンドー)のあまりの暴れっぷりに、我らのフライトは墜落を免れません。
といって、これがまったくのゼロになると、すっかり丸くなったブルース・リーがスクリーンの中でのんびりお茶をすすっている、なんとものどかでクソつまらない映画みたいなスタートアップ企業の出来上がりですよ。なんだ、お前は『ヴェニスに死す』かよ、ルキノ・ヴィスコンティかよ、クソ長くてクソ眠いんだよ、あの映画は!

・・・えー、ちょっと取り乱しましたが、
この辺りの黄金比を見つけ出すことが今日のすべてのスタートアップ企業においては急務であると、信ずるに至った次第です。

オレたちのチームは、その黄金比を見つけ出せるはずだ、と信じつつ、私はまた明日からの仕事に精を出すのでありました。
どっとはらい

ベンチャー企業の仮面の下の”理念"と寺山修司的中二病について

なぜ死なないのか、教えてやろうか? この仮面の下にあるのが『理念』だからだ。『理念』は死なない。~「Vフォー・ヴェンデッタ」~

最近ちょっとブログが止まってたけども、そろそろリハビリを。

トークノートという会社で働き始めてはや四ヶ月。もう四ヶ月。気がつけば夏。光陰矢の如し。まったく、知らぬ間に時間魔法の餌食になっていたとしか思えません。時よ止まれ、お前はほんとうに美しい!

とまあ、世迷い言はさておき。
この、トークノートという会社。社内コミュニケーションを良くするためのWebサービスを作ってます。
その理念は「いい会社をつくりたい」

最近、理念って大事だなあ、とつくづく思うようになりました。
もちろん、あらゆる企業にとって理念が大事なのは言うまでもないでしょうが、うちらのようなベンチャー企業の場合はさらに重要性が増すように思いますね。なにしろ、それが企業の「種」そのものじゃないか、という気がしているので。

このあたり断言できず歯切れが悪い言い方しかできないのは、自分がまだその種が育ち、大きく実ったという現実に立ち会ったことがないからですが(まあ、今まさに立ち会い途中だと思ってますけども)、ともあれ、企業が最初に掲げた理念が、その後に企業が成長した後の姿形・その企業風土さえ決めてしまうんじゃないか、という予感はそんなに外していない気がする。正確には、予感プラス人類の歴史的に。

そういう意味で、自分を含め今の会社のメンバーってほんとうに責任重大だなあ、と思う訳ですよ。
なにしろベンチャー企業なんて毎日が模索の連続だし、誰も正解なんて持っていないし、判断に迷うこと、不安になることなんていくらでもあるわけですが、それでも我々が今、安易な判断やら意思決定をしてしまえば、その結果っていうのは企業の後々にまで影響してくるわけですから。

ベンチャー企業ってのは、少なくとも最初のうちはもうクレイジーなくらいに理念的であったほうがちょうど良いのでは。

別に、理念が良ければ売り上げなんかなくっていい、というわけじゃなくて、その理念が正しく社会に貢献するものであれば、企業はその存在価値を失わないし、むしろその理念が行動原理となり、戦略原理となって結果的に企業は強く成長するはずだ、という理屈です。
ちょいと原理主義じみてる感もありますが、でもまあ、いわゆる中小企業と創業初期のベンチャー企業をわけるものってそこじゃないかな、と。

理念ってのは「人間は自由であるべきだ!」とか「男は強くあるべきだ!」とか「ミニスカ・ニーソで絶対領域だ!」といったある種の美意識やら理想論を少なからず含んでいるわけで、そういった意味ではどこか中二病的ですらあるわけですが、そういった青臭さみたいなものを企業からすべて脱臭してしまい、現実に過剰適応してしまうとその辺の飲み屋でひたすら酒を飲み管を巻きながら、若者に向かって「現実も知らないで何バカみたいなこと言ってんだ」と誰にも見向きもされない説教を垂れるような、つまらなーいおじさんみたいな会社になっちゃうんじゃないかしらん。

もちろんただの中二病が生き残れるほどベンチャー領域は甘くはありませんが、厳しくも困難な現実を前にして、なお「雨ニモマケズ風ニモマケズ」的理念を灯火のように高く掲げなくてはいけないな、と中二病歴が深く長かった私があらためて思うようになりましたよ。
病が深いのか、歴史が巡るのか。寺山修司、フォーエバー

まだ一度も作られたことのない国家をめざす
まだ一度も想像されたことのない武器を持つ
まだ一度も話されたことのない言語で戦略する
まだ一度も記述されたことのない歴史と出会う

たとえ
約束の場所で出会うための最後の橋が焼け落ちたとしても

~ 寺山修司『事物のフォークロア』~

理念から問いを発し、現実の中で答えを探す。
時には経験則を捨て、集団の逆を行く。

まあ、つまりは、初心忘れるべからず、ってことですかね。

というわけで、明日もまた楽しく理念的に仕事をしますか。
なぜなら楽しむこともまた、我々の理念なんだから。

または私は如何にして心配するのを止めてベンチャーを愛するようになったか

ちなみにブログのタイトルの前には、「プログラマーの異常な愛情」と入ります(どーでもいい)


※本題とは一切関係ないけど、キューブリックを偲びつつ。でも、どちらかと言えば「時計仕掛けのオレンジ」のほうが好き

さて先日、技術派遣をやっていた頃にお世話になった方と久々に飲んでいた時のこと、

「いやー、ウチの会社も昔はベンチャーみたいなことをやっていてね・・・」

という話が出まして、なにしろその方とご一緒させて頂いた現場はがっつりSIer系で、そして前のブログにも書きましたがSIerとベンチャーって考え方が水と油くらいに違う、なのにサラッと「昔はベンチャーだった云々」という言葉が出て来たものだから、ビックリしてちょっと鼻水が出そうになりましたよ。

その当時はまだネットはなく、パソコン通信が主流だったというご時世。
最初に立ち上げた事業が段々と伸びてきたと思ったら、ネット時代の到来で環境が激変。
結果として業績はガタ落ち、といって別の事業を開発する資金の当てもなく、当然の論理の帰結として会社は倒産秒読み状態に。
やむなく開発の請負をやり始めると、その仕事が順調に入ってくるようになり、その仕事をこなすために人員を強化して・・・、そして、という展開。

うーん、なんという『ベンチャーあるある』だろうか・・・。

ベンチャーで最初の事業が伸びなかったとしたらどうするのか?というのはけっこう重いテーマですよね。まー、「てへぺろ」で済まないのは確かでしょうけど。
社員さんがいたら毎月決まった額のお給料を支払わなければならないわけだし、「生き延びること」が最重要の課題になってくるのは当然だし、そのために開発の請負を始めるとか、何とかして日銭を稼ぐ手段を見つけるというのは、会社として正常かつ責任感を伴った判断だと理解できるのだけども、一方でその方向性で最適化しすぎると、もはやベンチャーに後戻りできなくなる、というか会社的に思い切ったことがしにくくなるのだろうな、と容易に想像がつきますな。

たとえば開発の請負をするために人を増やした後、どこかのタイミングで請負をすべて切って、見通しがまったく立たないベンチャー的事業にリソースを差し向けようと思っても、「なんでそんなことをやるんだ!? 明日からちゃんと給料出るのか!?」的不満が会社内部で爆発してしまいそう。

会社の創業当時からいる人と、その後から入ってくる人ではマインド的に温度差が生じるのはある程度は致し方ない、というかそれは物理法則的に仕方がないので、たとえベンチャーとして始まった会社であっても、そのままベンチャーであり続ける、ということは本当に難しいことなんだなー、と今さらながらに考えましたよ。

と言っても別に、ベンチャー=給料なし、って訳ではない。大体、明日からちゃんと給料出るのか!?」的不満って、むしろ至極まっとうな不満です。誰だって霞を食って生きていけるわけじゃないし、もしもその人に養うべき家族がいたら、ちゃんとお給料を持ち帰ることがその人の責任でもあるので、ちゃんと会社側も責任を果たさないといけません。

とは言え、最初から成功すると分かっている事業などあるはずもないので、要は個人を含めて、その組織がどこまでリスクを許容できるのかってことなんじゃないかと。
なにしろ9割以上の確率で失敗するのがベンチャーなんですから。

しかも本人の努力でどうにかなると言う話でもない。
さっきの話だって件の会社が創業した後に、ネット時代が到来することを予想できなかったのが本人の努力不足ということにはなりゃしません。
言うなりゃ、運です。もちろん、運だけでもいかんでしょうが。

さて、自分を振り返って考えてみると、子供もいないし、借金もないし、家族は共働きの嫁さん一人だけ。
だからこそ、多少リスクを取ってでも、今一番面白いと思える仕事に集中できる。

これって、ものすごく贅沢なことなんじゃないか、と思った訳ですよ。

家族の理解・協力、日本という非常に発達した経済環境、その他諸々のおかげで私がそういう働き方ができているわけで、本当に感謝が尽きません。さらに言うと、給料が下がったのに文句"ふたつ"言わずに、毎日笑顔で会社に送り出してくれる嫁には当分頭が上がりそうにありません。
ええ、ありがとうございます。頑張って働きまする。

最後にあとひとつ。
リスクを取る、と言いつつも、実際にそんなことを考えていたのは転職前のほんのわずかな期間のみで、今はただひたすら仕事が忙しいし、かつ仕事を目一杯に楽しんでいる有様で、正直言って何がリスクだかわかりゃしない。もしも"今"を楽しめなかったとしたら、それこそが最大のリスクじゃないか、と思える次第ですよ、人生的に。

責任感ゼロ? そのとおり。
その昔『お前みたいな社会不適合者はいつか必ずホームレスになる』と半ば本気で心配されていた私ですからね。
安定した人生なぞクソ、楽しんでこそ華ですよ。

オレ含めて変なヤツらいっぱいだし、ベンチャー楽しいよ、ベンチャー。

ダラダラすることの甘美さと良い休日について

今週の土日は思いっきりダラダラして過ごしました。そう、過ごしてしまった。以下、休日にやったこと。

・昼近くまでたっぷり睡眠。
・嫁のための仕事用の椅子を組み立てた(ちょっと肉体労働)。
・昔買ったゲームソフト(BIO HAZARD5)を引っ張りだして数時間プレイ。
・夕焼けを見ながら散歩しつつ、夜飲むための日本酒を買いにいく。
・嫁が作った天ぷらを食べ、冷えた日本酒とビールをいただく。
・映画(エクスペンダブルズと刑事ジョンブック)を立て続けに見る。ジェイソン・ステイサムと若い頃のハリソン・フォードがかっちょえー!
・このブログを書く。
※ そして、このブログを書く手を時々止め、窓の向こうの青空と白い雲を見ながら、まだ休日が半日も残っていると考えてニヤニヤしている。

はい、ほとんど生産的なことはしていません(キリッ)
ハードワークがデフォのベンチャー領域の住人としてはこういった時間の使い方、本来ならば罪悪感を感じて然るべきところですが、むしろ逆に最高に充実した気分を味わえたんでございます。何故でしょう?

若い頃、休日を無為に過ごした挙げ句に、日曜夕方のサザエさんのテーマを聞いた日には、思わず人生に絶望し多摩川まで全力疾走して身を投げたくなったものですが、現在のこの心の落ち着きようはどうだ。いったい何が変わったのかしらん。*1

というわけで、その辺りを含め、ちょっと休日の効用について考えてみましたよ。

良い仕事が良い休日を作る。逆もまた然り

若い頃と圧倒的に比べて違うのは、休日以外の時間の使い方でしょうね。
つまりは仕事をしているか、していないか。もっと言えば、良い仕事をしているか、していないかの違い。

良い仕事の定義は人それぞれでしょうが、私の場合は次のすべてを条件を満たしたら、まあ、それは良い仕事だと言えるんじゃあるまいか。

・自身が楽しみ、充実している。
・個人、組織の両面で成果が上がる。
・仕事のゴールに社会的な意義や価値を感じる。

私は高校を卒業してから、いろいろな職業を経験しましたが、世の中って上記のすべてを感じさせてくれる職場ってそうそうないんですよね。

たとえばパチンコ屋で「ジャンジャンバリバリとー! お出し下さいませ、お取り下さいませーっ!」とアナウンスしていた時なんか、その一瞬はノリノリでけっこう楽しい気分になるんですが、まー正直、社会的な意義なんてまったく感じられませんよね。
ましてや、そのスジの方に首根っこ掴まれて、「この台、ちっとも出ねえじゃねえか、お前んとこの店、釘*2締め過ぎちゃうんか、ボケえっ!!」と脅し付けられてヒイイイイイイっとなった日など楽しい気分になれるはずもなく。

本屋で仕事をしていた時は、自分が本好きだったこともあって「本を売る」という仕事に強く意義を感じてはいたんですが、本屋さんの売り上げはその頃からずっと業界を通じて右肩下がり。
いつかはヘッセのように、本を売りながら自分の本を書く、と夢見ていた私ですが、自分自身で業界の現実を目の当たりにして、いろんなものが揺らぎましたよ。年々厳しくなる状況に頭を抱える店長や、一生涯、本屋でいるために結婚をあきらめた大卒の社員さんとか見てたら、正直、希望なんて持てません・・・。
余談ですが、いつだったか久しぶりに田町に出向き、自分が働いていた本屋がなくなっていたのを知ったときの心の痛さと言ったら・・・。

本屋は好きな仕事だったし、楽しくもありましたが、それでも仕事として成果が出なくてはどうしようもありません。
人間、日々働くためには希望が必要で、成果はその希望を補強してくれますから。

またまた余談ですが、出会い系サイトのサクラをやった時なんか、楽しくもなく、自分の営業成果も上がらず、社会的意義なんかコレっぽちも感じられない、というまさにパーフェクトな職場環境でした。この場を借りて、貴重な職場体験を提供して下さった関係者の皆様に厚く御礼を申し上げます。あなた方の頭上に、さっさと隕石が落ちてくればいいのに!

ともあれ、話を元に戻すと、こういった仕事の日々の後にやってくる休日を無為に過ごすとですね、「自分はいったい何のために生きているのか」といったキルケゴール的、『死に至る病』的な絶望に駆られる訳ですよ。*3

一方、日々の仕事が楽しく充実していて、成果も上がっていて、かつその社会的意義も感じられるって場合*4は、休日の味わいがまるで変わってくる。『何もしない』という時間が、ものすごく大切で、ゆったりとした幸福なものに感じられるんですよ。

アップテンポで平日を走りきり、次の週に備えるために呼吸を整える。
あー、休日ってこういうものだったよね、という感覚が久しぶりに蘇ってきたわけですよ。

なんだか書いているうちに、星新一の『あすは休日』というショートショートを思い出したので、後で読み返そうw

休日とはマインドセットと深呼吸

休日 = 働かない日、では必ずしもない、と思うんですよね。
家に帰って眠っているときも休日の一部なのか、風邪を引いて家で寝込んでいる時も休日なのか、と言うとちょっと違う気がする。
ただ頭や体を休めるのは、休日の効用の一部でしかないんじゃないか、と。

普段の仕事の場合、自然と一定の文脈やら方向性の中で考えたり、行動するように様々な形で圧力が働きますが、休日は、そういった文脈やら圧力やらから自由になって、頭を切り替えるための貴重な機会だと思うんですよ。

人生には限りがあるってことを考えたり、
宇宙の果てしない広さを想像したり、
沈む夕日を眺めたり、
少年時代の思い出だったり、
家族や恋人の手を握りしめたり、

もうね、休日を有意義に過ごそう、なんて貧しい考えは捨てましょう。
『有意義に過ごそう』という思いからして、すでに休日のマインドセットからはほど遠い。というより、それは不健全と言っていい。

休日には、心を自由にして、ただ深い呼吸をしましょうよ。
精神的にも、肉体的にもね。

生存競争と休日と人間らしさ

当然ながら自然界には、休日などありゃしません。
例えば、サバンナのライオンがですね、「今日は休日だから仕事をするのヤメ」とか言い始めて終日、草原に寝転がっていたとしたら、腹が減るだけです。ましてや、「有給がたまっているので、ちょっくら1週間休んで消化しますわー」などと言おうものなら、数日にして餓死ですよ、餓死。

かように休日とは人間の発明に他ならないのですが、その人間界においても自然界と同様、生存競争とは無縁ではありません。

というわけで、生存競争的、というより業界競争的、会社都合的には「24時間365日、死ぬまで働け」的な発想がまかり通るのは、ある程度は仕方がないと思うんですが、どうもこの辺り、勤勉な人間性と低い生産性では定評のある日本社会の限界と言いますか、一皮ムケ切らない原因のように思えてなりませんよ。

「24時間365日、死ぬまで働け」的な発想の裏には、会社やら組織やらといったシステムの稼働率をいかに高めて、収益を高めようという意図があるわけですが、最終的に人間不在で済むシステムであれば、すべて機械化、自動化に置き換えてしまえばすむ話じゃないですか。つまり、人間は休んでいいのです。

もしもその仕事、会社、組織、そのシステムに"人間"が必要不可欠であるならば、そのシステムの構成要素である人々が、どういったことに幸福を覚えるか、どういった時にすばらしい発想を得るか、どういう時に仕事に喜びを覚えるのか、そういった『人間らしさ』に対する理解が必要だと思うんですよ。

そういった一人一人の『人間らしさ』が素晴らしい仕事を生み出し、ビジネスとしての価値を生み、会社や組織が偉大な目標を達成していく、という状況を生み出したいのであれば、休日に対する無理解などナンセンスです。
だって、休日ってのは、人間らしさの固まりみたいなもんじゃないですか。

グレートに働いて、グレートに休む。
日本が、もっとそんな社会になればいいのに。

最後に

休日中に、休日についてアレコレと考えたらけっこう面白かったので文章にしてみました。

日本人はよく働き過ぎと言われますが、よく働くことは別に悪でも何でもないと思うのですよ。
しかし昔と違って、現代の日本では、"ただ"よく働くだけではもはや価値を生み出しにくい。
日本人の勤勉さが高度なサービスを次々と生み出したせいで、ただ勤勉であるだけでは価値にならない、というこの矛盾。

だったら、ちゃんと休んで、自分の人生をひっくるめて仕事の価値って何なのか、ちゃんと考える時間を持った方がよいな、と考えた次第です。

もちろん、もうすぐ飢え死ぬってときに寝転がっているなど愚の極みですが、サバンナのライオンだって死に物狂いで狩りをしてようやく獲物にありつけた夜、眠りの甘さ、命の甘美さを噛み締めながら眠るのでしょうし、その甘美さを味わうために生きているんじゃないかしらん。

人間に置き換えれば、それは休日の甘美さ。
良い休日が、良い仕事を作り、良い人生を作る、ってなもんですよ。
それに神様だって、1日は休んだんですからね。世界を作るときに。

明日からまた仕事ですが、頑張って働きますか。
また、ダラダラとした休日の甘さを味わうために。

*1:いよいよ不惑に近づきつつある年齢のせいだけではないと思いたい。なにしろ私の精神年齢は18くらい(絶対)。ピッチピチDEATH!!

*2:余談ですが、パチンコ屋では釘師と呼ばれる方にパチンコ台のひとつひとつをきっちり調整してもらっていて、どれくらいの確率で当たりを出すか、かなり高い精度で調整しているんですよね。ちなみにその店では釘師さんが「店長さん、こんなに締めたらお客がよそに流れちゃうよ」と愚痴をこぼすぐらい締めてましたw

*3:ちなみにこの本はプラトンの『国家』と並んで、カッとなって買ったけども読んでいない本の代表例

*4:ちなみにトークノートという会社で働いています。

Startup Weekendは起業家の夢を見るか? 最終日

前回の続き。

Startup Weekend Tokyo, May 2013もとうとう最終日となりました。
"秘密結社"というコンセプトの元に集結し、さらにそこから"イタズラ者たちが集う場"という着想を得て、「イタズラ者のためのクラウドファウンディング」というアイデアをひねり出した私たち、その名も『チーム・マンダラ』。

いい年をした大人たちが、大マジメに不マジメをやろうと決めてしまったものだから、さあ大変!
ここまで来たからにはもはや後戻りなどできません。
さあ進め、チーム・マンダラ! オレたちに明日はない!(社会人的な意味で )

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※チーム・マンダラの心の葛藤模様。画像はなぜか『フルメタル・ジャケット

というわけで、私たちチーム・マンダラとStartup Weekend Tokyo, May 2013最終日の模様をお届けします。

イタズラと被害者とMac Book Air

さて"イタズラ"というちょっぴり反社会的なテーマをビジネスの中心にすえようとする私たちですから、まずは自分たちでもイタズラをしてみないことには話になりません。

というわけで標的に選ばれたのは、Startup Weekendのファシリテーターのミヒャエルさん。
なんとも迷惑な話ですが、いわばこれも運命。
そう、一度目をつけられたからには、私たちの魔の手からは逃れることができないのだ! ヌハハハハ!

快くイタズラの被害者になってくれたミヒャエル。彼の広い心と素敵な笑顔、そして彼のMac Book Airに感謝します!
なお、イタズラを考え実行した浜松からの刺客こと、ナオさん。その度胸と行動力にも惜しみなく賞賛を送りたい。

ちなみに、ミヒャエルが怒り出したら、ぼくはあなたを盾にして逃げるつもりだったってこと、今さらながらに告白しておきます。
いえい。

イタズラ×クラウドファウンディング=「Trick and Treat」

私たちの考え出したサービス。その名も「Trick and Treat」!!。

ハロウィンの子供たちは「お菓子をくれなきゃイタズラするぞ!」と、か弱い大人たちを脅迫して回ります。やっていることはミカジメ料を要求するヤクザと同じですが、きっと可愛い子供だから許されるのでしょう。桑原桑原。

ところで、私たちの場合は「イタズラするからお菓子(現金)をよこせ!」ですからね。さらに身もフタもありません。
しかも、我々のチームは一名の大学生を除いてアラサー、アラフォーの集団。たとえ、どんなに可愛く振る舞って「え〜い、イタズラしちゃうぞ〜(はーと)」と繰り出したとしても、ただ人様の殺意を呼び起こすことになるのがオチ。
うーん、デンジャラス。

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※ハロウィーンの子供たち。同じことを私がやると、きっと警察に捕まります。

まあ、冗談はさておき。

私たちのアイデアについては検証すべき課題がいくつもありますが、その最たるものは何と言っても「いたずらのために人は寄付をしてくれるのか?」という点です。

しかし、前回のブログでも書いたとおりこれを検証するのは簡単。自分たちでイタズラを企画してみて、その企画に寄付してくれる人がいるのかどうか、実際に探してみればいいのですからね。
幸いにもチーム・マンダラには日頃から営業力・突破力を武器に仕事をしている強者たちが揃っています。彼らの力を使い、実際に一口100円で寄付を募って、どれくらいの人が応じてくれるのかを確認することとなりました。

どんなイタズラをするべきか?
みんなでアレコレ考えていると、またもやナオさんが私に言いました。

「タクヤさん、ちょっと自分に考えがあるのでプレゼンの時間を少しもらってもいいですか?」

そう話すナオさんの顔つきはまさにイタズラ好きの少年のそれ。

「1分もあれば十分です。そうしたら、ぼくが会場のみんなに対してイタズラを仕掛けてやりますよ」

へー、どんなイタズラ?と聞いても、ニヤリと笑って「それは実際に見てのお楽しみ♪」としか言わないナオさん。必殺イタズラ仕掛人とは彼のことです。

興味は尽きませんがきっとナオさんなら面白いことをやってくれるはず、そう思い快く承知した私ですが、このイタズラがまさかあのような顛末になるとは、この時の私が知る由もありません。まあ、詳細は後述するとして。

ともあれ、どういうイタズラにするかは各メンバーが各自で考えると決め、さっそく各方面へと走ってもらいました。
すると、なんとわずか数時間のうちに12人から寄付が!

12人×100円 = 1200円

それはコンビニのバイト代二時間分にも満たない小さな金額ですが、検証の手始めとしては大きな成果です。
まー、大の男たちが積み重ねられた100円玉を前に歓声を上げている姿は傍目から見るとどうなんだ?って気もしますが(笑)
しかし、この時点で重要なのは金額の多寡ではなく、実際にお金が集まったという"事実"そのものです。

思い切り乱暴に言うと、後はこれを100万人、1000万人相手にやる方法さえ考えればいいわけですからね。

まー、そう簡単にはいかないのが現実ですが、ともあれ検証の結果にチームの皆が活気づいたのは確か。
このまま最後まで突っ走ったろーぜ!という感じにね。

最終審査!!

前回の記事にも書きましたが、私がSWTに参加した目的は優勝することではありません。私がやりたかったことはこの三日間の体験を通じてひとつのチームを生み出すことです。
とはいえ、この最終審査の体験を抜きに「Startup Weekend」が語れないのもまた事実。

前回のSWT体験では最終プレゼンを頼りになる仲間にお任せしたのですが、今回は絶対に自分でプレゼンするつもりでした。
いや、実を言うと、私はプレゼンが苦手です。しかし、この三日間、私のくだらないアイデアのために力を尽くしてくれた仲間たちに報いるためにも、言い出しっぺが最後にプレゼンをすることで締める、それが筋だと思ったわけでした。

そういうわけで最終日に私が作成したプレゼン資料がこちら。


ずらずらとデータを書き並べるのではなく、なぜ"イタズラ"なのか、私たちのチームがどんな世界を目指しているのか、そういったメッセージを強調したいと思ったのですよね。
優勝が目的ではないにしても、アイデアに込められたその思いは我々にとって真実であり続けました。だから、そこをプレゼンに活かすと決めたのです。

将来のキャリアを危険にさらし、競合調査や動画作成をしてくれた大学生のユーヤさん。
驚異的な行動力の持ち主にして、イタズラの仕掛人、ナオさん。
実直に"誰にとっての価値を生むか?」を常にチームに思い出させてくれたタロさん。
「サービスにインパクトを」を考え続け、多方面に検証に走ったマサヤさん。
たった一人でデモサイトを開発してくれたエンジニアのセッチーさん。
他チームであるのにも関わらず、スライドの素敵な表紙を提供してくれたO女史。
食事時になるとどこからともなく現れ、「え、秘密結社じゃないの?」と言いながらもチームを見守ってくれた妖精オデン。

そんな仲間たちの努力を無駄にしないためにも、プレゼンは最高の物でなければなりません。
何度も何度も練習を繰り返しながらも、本番の刻限が近づいてくるにしたがって、私は自分の心の中で徐々にプレッシャーが高まっていくのを感じていました。

そうこうするうちに時計の針もガシガシ進み、とうとうやってまいりましたよ。
Startup Weekendのフィナーレにして、最後の大舞台。
最終審査。その幕開けでございます。

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※オーガナイザーの皆さんによって整えられた戦いの舞台

この日、審査員を務めるのはこの方々!

渡邊大介
新規事業開発室 プロデューサー/アドマン

奥田 浩美
株式会社ウィズグループ 代表取締役

Yoshihiro Kurashige
取締役 at Netyear Zero, Inc.
http://tokyo.startupweekend.org/から転記。敬称略、原文まま。

審査員の皆様に厳しい視線を向けられながらも、プレゼンに挑むチーム・マンダラの運命や如何に!?

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※プレゼン中の私。「ええ、私が釣り上げた魚はこんなにも大きかったんです!」と言っています(嘘)

プレゼンの滑り出しは順調。練習の甲斐もあって、なんとか淀みなくしゃべることができました。
・・・が! スライドを何枚か進めたところで現れた謎のページ。
な、なんだ!? このスライド、オレ知らねーぞ!?

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※突如現れた謎のスライド。当時は完全に硬直化していて何もわからなかったが、今見ると思わず殺意がわく顔である。

泡を食っている私を尻目に、「みなさん、ありがとうございました!!」と元気よく礼をしてから、何事もなかったように会場を去ろうとするチーム・マンダラのチーム一同(藤井以外)。

ここでようやくナオさんの言葉に思い当たった私です。
くそー、はかりやがったな、ナオさん。なーにが、会場のみんなにイタズラを仕掛ける、だ(笑)。
そう、イタズラの標的はこの私。
1200円の寄付金は、まさにこの目的のために集められたものだったんです。

なお、私のリアクションが少なかったせいで、やらせと思われた方も何人かいたようですが、そのような事実はございません。本当に、まんまとしてやられたんでございます。まったく、なんつー連中だ!(笑)

ちなみに、やらせと思われたことが悔しかったらしいナオさんは
「あー、こんなことならタクヤさんにぐらいつけときゃよかった」
とか申しておりましたよ。
火・・・。

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※審査員から評価を受けるチーム・マンダラ

ちなみに、気になる審査員の方々の反応ですが、

倉重さん「えー・・・もういいや、あっはっは」
奥田さん「・・・はい、ありがとうございました(と、にっこり笑ってマイクを渡邊さんにスルーパス)」
渡邊さん「はい、ぼくもコメントないです(笑)」

と、完全審査放棄。まさにワンサイドゲーム
ここぞとばかりに会場は笑いに包まれ、ある意味、私たちの圧勝でございます!(笑)

あ、そうそう、優勝したチーム・Shakin!の皆様、おめでとうございます!

心より祝福を申し上げますが、まーなんですか、本気で優勝を狙いにいってたら絶対ウチら勝ってたし。
っていうか、サービスのインパクトなら絶対ウチらが勝ってるし。
ある意味、影の功労者なんだから感謝のひとつもあってもいいんじゃないかと、ウチらマジで思ってるし・・・。

・・・はい! 調子に乗りました! ごめんなさい!

「それはビジネスモデルじゃない。ただの企画です」

さて、すべてのチームの審査が終わり、審査員の皆さんが別室へと下がった後、進行役のLeeさんが珍しく厳しい顔つきをしてマイクを取りました。
多少記憶があやふやですが、Leeさんがこのとき話してくれたことをできる限り思い出して書いてみます。

「審査員の皆さんは優しいですね。
 私は思っていることをまっすぐにしか伝えられないので、こういう言い方になるのを許してください。
 あなたがたは何もわかっていません。
 ビジネスモデルが何なのか? それを理解しているチームは、私から見て1チームもありませんでした。
 皆さんがプレゼンしてくれたアイデアはどれも素晴らしかったです。
 でも、それはただの企画です。企画としては素晴らしいけども、ビジネスモデルではありません。
 Startup Weekendでは皆さんは全員が起業家として過ごします。企画をする人ではありません。
 起業家は新しいビジネスを作り出し、それを証明してみせる人です。
 会ったこともないあなたのために、実際にお金を払ってくれる顧客を見つけ出す人のことです」

Leeさんの言葉に思わず静まり返る会場。
さらにLeeさんは、日本以外で、ものすごく優秀な大学生を集めて開催したStartup Weekendであっても、学生たちはやはり企画作りに終始してしまう、という話をしてくれました。

この話を聞いて、じつは、私は少し腹が立ったのです。

私だって、ビジネスモデルを作り出すことが難しいのは百も承知です。
しかし、Startup Weekendで与えられる時間はたったの54時間。コンセプトしかない状態で仲間を集め、議論をし、検証に走り、プレゼンをする。
私たちのチームは文字通り54時間を全力で走り回りました。それはきっと、どのチームも同じでしょう。

その54時間でビジネスモデルが作れていない、と言われればそれはその通りです。しかし、元々そんなの無理に決まってる!というのが私の考えでした。
ビジネスモデルはそう簡単に生まれはしない。それは私がベンチャー領域に移ってきてたかだか数年の経験でも、骨身に沁みて理解していることです。

だからこそ、今回の私は"チーム"を生み出すことを目標とし、その結果、幸運にも素晴らしいメンバーに出会うことができ、またそんな彼らと、可笑しくも楽しい、素敵なチームになることができました。そのことに私は満足していたし、誇りにも思っていたのです。
その成果じゃ足りないのか? だったらどうしたらいいんだ?というのが私の率直な感想でした。

どうしても納得のいかない私は、パーティの途中、機会を捉えて直接Leeさんに疑問をぶつけることにしました。
自分たちはどうすれば良かったのか?
いったい、何が足りなかったのか?

Leeさんの返答は私の想像を超えたものでした。

「そう、(ビジネスモデルを作り出すのは)54時間では確かに難しい。
 でも起業家として行動すれば、54時間でもかなりのことができますよ。
 藤井さんのチームは、イタズラの動画を作りましたね? もしも私だったらそれを使ってすぐにテスト用のサイトをアップします。それだったら1時間くらいで出来ます。次に、そのサイトにアクセスしてきた人を調べ、彼らに連絡をつけるんです。そして、自分たちのサービスに5万円払ってもらうようにお願いする。
 当然、すぐにはお金を払ってもらえないでしょう。でも、『なぜ払うことができないのか?』、その理由を直接聞くことができるでしょう。
 あるいは、お金を払ってもらえなくても、あなたの考えに共感してファンになってくれるかもしれない。
 もしかしたらその人は投資家で、あなたを様々な形で応援してくれるようになるかもしれない。
 そんなちょっとしたキッカケからスタートアップはどんどんブーストしていくんですよ。
 そのために行動する、それが起業家というものです」

この言葉を聞いて、恥ずかしながら、私はやっと、startupweekend.orgのサイトに書かれているキャプションの意味と重さを理解したんですよね。

『No Talk, All Action.
 Launch a Startup in 54 Hours.』

そう、私たちはあまりに話しすぎ、そして、あまりに行動しなさすぎでした。
いや、実際は、自分たちではけっこう"行動"しているつもりでいたのですよ。Startup Weekend Tokyoの会場内で他の参加者にインタビューしたり、街頭に出てアンケートをとってみたり、あちこちに電話してみたり。

でも、その量と質は、たとえば別チームの『シャッター通りに屋台を開く』というアイデアに対して、Leeさんが「私だったら300万くらい使って実際に店を開いてみます。そして3時間くらい営業してみてデータを取り、次のアクションを考えます」と言うときの"行動"と一緒ではないのは明らかです。

Leeさんの言葉を聞いて、私は『起業家』というものが、あまりにも自分とはかけ離れた遠い存在に思えて、正直呆然としてしまいましたよ。というのも、そんなふうに発想して、行動すること自体、そもそも普通の人にはとても異質でハードルが高いことのように思えたからです。

そんな私の気持ちを察してか知らずか、続けられたLeeさんの言葉が非常に印象深いものとなりました。

「もちろん最初から誰でもそんなふうに行動できるわけじゃない。そんなふうに行動できる人はごく一部の天才だけです。
 でも、私は、誰だって訓練さえすれば、そんなふうに行動できるようになると思っています。
 普通の人々を起業家に変える。それがStartup Weekendのやりたいことなんです」

Startup Weekendというストーリー

そんなこんなで、興奮と熱狂に満ちた夢のような三日間が終わりました。

私は実際にスタートアップに参加したこの数年の経験から、このStartup Weekendで過ごす三日間はいろいろな意味で特別なものだと感じるんですよね。
SWTでの体験は、実際にスタートアップ企業が経験するものとはかなり異なっています。と言うよりは、スタートアップの"良い体験"だけを凝縮している、と言った方がいいかもしれません。そこでは、延々と続く赤字のグラフや、株主とのモメゴトや、怒声を張り上げるチームメンバーに頭を悩ませる必要はありませんから。

もしかしたら、Startup Weekendの体験を通じて実際に起業するチームが、最初に経験する挫折は、自分たちのスタートアップがまるでStartup Weekendのようではない、という現実かもしれません。

だけども、人生が映画とまるで同じではないから、と言って、生きることの意味がなくならないのと同じように、Startup Weekendのようではないからと言って、スタートアップという生き方が価値を失うことはないでしょう。

自分の手で価値を生み出したい、この世界を変えてみたい。
そんな情熱を持つ人々に共感し、賞賛し、その挙げ句に、そこに立ち会ったごく普通の人々を起業家へと変えていく。
それがStartup Weekendという物語の機能なんだろうな、と元小説家志望らしく私は考えるのですけどね。

あれ、でも、それってスタートアップというムーブメントそのものじゃね?
世界って物語だったんですよ、旦那。

まーともあれ。
今、こうしてブログを書きながら思い出してみても、本当に楽しい三日間でした。
※しかし、ブログを書くのが遅すぎてこれを書いている時点で、すでに一ヶ月以上も時間が過ぎてしまいました・・・。反省・・・。

この素晴らしい体験を提供して下さったSWT関係者の皆様、チーム・マンダラの仲間たち、参加者の方々、そこにいたすべての人に感謝を捧げます!
ありがとうございました!!

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※チーム・マンダラの仲間たち(終電に間に合わない!とダッシュしたナオさんと、仕事の締め切りが近かったオデンさんを除く)

Startup Weekendは起業家の夢を見るか? 第二日目

前回の続き。

Startup Weekend Tokyo, May 2013、二日目の朝。
目を覚まして真っ先に脳裏によみがえってきたのは、いい年をした大の男たちが「秘密結社、秘密結社」などと浮かれ騒ぎながら、笑い転げていた昨晩の自分たちの姿でございます。
だって、あなた、秘密結社ですよ?

ふつーだったらここで我が身を恥じるあまりに思わず出家して深山に分け入り滝に打たれ南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏と題目を繰り返しつつもついには開眼・悟りの境地に達しすべての煩悩を消して残りの人生を平穏無事・泰平自若・色即是空で過ごしてしまいそうな勢いですが、
当然ながら私はそこまで人間が練れておりません。

ルンルン気分で渋谷の会場に向かった次第ですが、今考えてみると次の日には誰もこない、ということも十分にありえたわけですよ。
一晩過ぎたらチームのみんなが我に返って、「やべえ! オレ、秘密結社なんてやってる場合じゃねーよ! 人生にはもっと大切なものがあるんだあーっ!」と思ったとしても、むしろそれは人として当然だと思うのです。

それなのに、元気いっぱいの顔してチームメンバーが続々と集結! まったく、君らには人としての恥じらいがないのかよっ!!

しかし、一名はとうとう姿を見せることはなく、人としてのごくまっとうな苦悩を抱え、山に旅立ったものと思われます。
まだ滝の水は冷たかろうに・・・。
彼の人生に幸多かれと祈るばかりです。

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※チーム・マンダラ。人としての羞恥を忘れ、この笑顔である

チーム!チーム!チーム!

冗談はさておき。
以前のブログでちょっとだけ書きましたが、二日目のスタートの際、私はチームのみんなに三つのルールを提示しました。

すなわち、

ルール1 お互いをファーストネームか、ニックネームで呼び合うこと。
ルール2 つねにアイデアの面白さを追求する姿勢を捨てないこと。
ルール3 「チームこそが成果」という共通認識を持つこと。

というルールです。
特に三番目は重要で、私はこれまでの経験から、スタートアップにとって唯一必要不可欠な資源は"チーム"ではないか、と強く意識するようになりました。

スタートアップでは当然、資金やら知名度やらとその他のあらゆる資源が不足しているのが常ですけども、スタートアップの活動の根幹を支えるものは結局チームの力です。

そしてチームとは、単にスキルの組み合わせだけで作られるものではありません。
信頼とか友情というような、なんともダサくて、人間くさい精神的なつながりも同じくらい重要だと思うんですよ。
というのも、スタートアップは必ず何かしらの失敗や苦難を経験しなければならないからです。
成功できるから一緒にいるのではなく、失敗・苦難を前にして、なお、それを一緒に乗り越えることができるか、というのはチームにとって大事なテーマだと思います。

そんなわけで、今回のStartup Weekendでは優勝できるかどうかというのは最初から眼中になく、(それはそれで問題な気もするけども)
ともかくもこの三日間、仲間と一緒に笑ったり、議論を戦わせたり、「どうしよー」と頭を抱えたりしつつ、でも最後にはチームで考え、行動するってことはこういうことなんだってことが仲間たちと共有できたらいい、と思っていたのですよ。

まあ、それが上手くいったかはまた後で書くとして。

秘密結社の秘密

さて、秘密結社をコンセプトにしたサービス開発、ということで、そもそも秘密結社ってどういうものなの?という話になりますよね。ええ、我々もそうなりました。


※オレたちの頭の中の「秘密結社」は大体こんな感じ

メンバーの一人、真空竜巻蹴りのタロこと、タロさんがリサーチしたところによれば、秘密結社とは以下の三つの条件のうちいずれかを満たすものを言うのだそう。すなわち、

①存在が秘密
②活動が秘密
③メンバーが秘密

真っ先に議論で浮かび上がったのは、そもそも秘密結社は集客できるのか、という根本的かつ超重要な問題でした。そりゃあそうだ。

ちょっと秘密結社の集客方法についてシミュレーションを脳内で繰り広げてみると・・・

①「存在が秘密」パターン

俺「すいませーん、ちょっといいですか?」
客「はい、何でしょう?」
俺「・・・・・・・・・・・・(秘密なので何も言ってはいけない)」

うん、これは絶対ムリ!!

②「活動が秘密」パターン

俺「すいませーん、ちょっといいですか?」
客「はい、何でしょう?」
俺「あの有名なAさんやBさんもいるコミュニティに参加してみたいと思いませんか?」
客「へー、何をやるコミュニティなんですか?」
俺「秘密です (キッパリ)」

・・・うーん。
この場合、お客にはそれなりの興味を持ってもらえそうですが、そもそもコミュニティ内にある程度のネームバリューを持った人が存在しないとワークしそうにありません。
で、その人たちをどうやって引き込むかと言うと・・・ハイ、消えた!

③「メンバーが秘密」パターン

俺「すいませーん、ちょっといいですか?」
客「はい、何でしょう?」
俺「とあるコミュニティに参加したいと思いませんか?」
客「どんなコミュニティなんですか?」
俺「参加するメンバーについてはお話しできませんが、ピ───(放送禁止音)なことをするコミュニティです」
客「・・・・!!!!(声にならない叫び)」

うん、これだ! 我々が進む道はこのパターン以外にありえないっ!
しかしながらこの場合、どんなことをやるのかが大変重要なテーマになるわけです。
まさか本当に放送禁止的なことをやっていいはずもなく、と言って平凡なことをやってもそもそも企画としては全然面白くないのですよ。
じゃあ、どうするか!?
思わず首をかしげるチーム一同。
さーて、困った!

(ちょっとだけ)反社会的で行こう!

さて、このときチーム内の議論もやたらと真面目な方向に流れそうになりました。
つまり、みんなでジョギングするとか、勉強するとか、いかにも健全健康、デキスギ君的優等生風なアイデアを話し出したのですよね。
なんなのだ、君たち! そんなリア充全開のアイデアを出したりして!

秘密結社を一緒にやろうって言ったのに、今さら真人間に戻るつもりかよっ!!

あーでも、この流れ。なんだか見覚えがある展開です。
前回のチームも、やはり一度はこんな風に「わりと」実現できそうなアイデアを考えようとしたのでしたっけ。
まったく、なんというデジャヴュ。

そういった現実的な発想はとても大事だと思うし、かつ、本来的に人間にとって必要な思考だとは思うのですが、安易な最適解に陥ると、当然、新しいアイデアなんて出てこないと思うのですよ。

まあ、アイデアなんてのは大体「うわ、これ新しい! すっげーイケてる! 俺様グレートォォォォオオオオッッ!!」って思っているのは100%自分だけで、とっくの昔にもっと頭のいい人が鼻クソほじりながら5分くらいで考えたりしているものです。

そんなことは百も承知の上で、それでもなお、自分の実現したい価値感や世界観に対して忠実に、かつ、自分自身が面白い、と思えるアイデアを出し続けることが大事だと思うのですよ。
第一、当たり前の論理を積み重ねてたどり着ける場所には、もうとうの昔に他の誰かがたどり着いていて、ちゃんと居場所を占めているはずです。そこに今さら私たちが突っ込んでどーなる?

私はルール2「つねにアイデアの面白さを追求する姿勢を捨てないこと」を皆に思い出すように促してから言いました。「ちょっとだけ、反社会的で行こう! 少しくらい他人が眉をひそめるくらいのこと、人を驚かせるようなことをやったろう!」

そうしたらチームの皆が、いかにも共犯者然としてニヤリと笑いました。
少しばかり反社会的なことをやる、と決めたら、妙な共犯者意識がチームに芽生え始めたんですよ。まったく皆いい年をした大人のくせにw
ま、みんな昔は悪ガキだったんだろうし、「三つ子の魂百まで」と言いますからね!

イタズラ者バンザイ!

というわけで、私たちチーム・マンダラが次に出したアイデア。それは「イタズラ」でした。


http://ja.wikipedia.org/wiki/ジャッカス

すなわち、イタズラ者の、イタズラ者による、イタズラ者のためのSNSサービス。
ちょっと迷惑だけど、でもやっていることは面白い! そんなヤツらを一同に集結し、思う存分イタズラを繰り広げてもらおう、と私たちは考えたのでした。

我々の中に芽生えた共犯者意識のように、退屈な世界をイタズラでぶっ飛ばす、そんな人々もまた共犯者意識によって固い絆で結ばれ、面白い体験を得ることができるのではないか? それこそが私たちのアイデアの核となる考えでした。

もしもアナタがこの危険な香り漂うSNSの会員になりたいと思ったら(もちろん思うでしょう?w)、SNSの既存会員が試験として出したイタズラをして、しかもその証拠(たとえばイタズラ行為の動画)を提出しなければなりません。

もちろん、そのイタズラは法に触れるものであってはならず、しかも多少なりとも他人を笑わせるものであることが重要です。
良いイタズラと悪いイタズラの違いは何か? それは、イタズラされた人が笑顔になれるかどうかですからね。

とまあ、そこまで考えたのいいとして。

「ビジネスモデルは?」

だれかが発した言葉に固まるチーム一同。
うーん、デジャヴュ・・・。

メンタリング

ビジネスモデルはどうするのか。
チームの皆で議論を重ね、出てきたアイデアを検証するために各方面に電話をし、果たしてビジネスになりうるのか確認する。
そんな作業を数時間繰り返しているうちに、あっという間にメンタリングのお時間となりました。

すなわち知識も経験も豊富な先達の方々から、私たちのアイデアについていろいろと意見がいただける訳です。こういう場が用意されているのがStartup Weekendの心憎いところ。前回はボッコボコにやられた感がありましたが、今回もまた、まったく宿題が進んでいないような状態でのメンタリング。果たしてどんな斧を投げられることやら・・・。

チーム・マンダラのメンタリングを担当してくださったのは、GTICの秋山さんとクックパッドの橋本さん。
秋山さんは前回のSWTでご一緒させて頂いた縁もあり、「おー、いらっしゃい!」と気さくに声をかけてくれましたよ。

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※メンターの秋山さん、橋本さんからメンタリングを受けるチーム・マンダラ

ともあれ「イタズラ者のSNS」というアイデアを恐る恐る説明したところ・・・

秋山さん「うん、面白い。やればいいじゃない(笑)」
橋本さん「・・・もはや何と言っていいかわからない」

と、ほぼノーゲーム状態に!(笑)

とくに秋山さんは母校があのMITというだけあって、イタズラにはずいぶんと好意的な様子。
なにしろMITでの学生のイタズラといえば、もはや"歴史"ですからね。
そのとき、秋山さんが話してくれた有名なイタズラがこれ。


※1926年のいたずら。学生寮の上からフォードを吊り下げているところ。

MITの知力も行動力もある学生たちにとっては、こういった手の込んだ、しかも悪意のないイタズラはまさにステータスそのものだったんでしょう。そして大学側もそういった行動を苦笑しつつも許容しているのだろう、と容易に想像がつきます。

かつてのイタズラ好きな学生たちがその後社会に出て、人々をびっくりさせるような仕事をしたのだと考えると、「イタズラ」というものが、なんだかとてもワクワクするものに思えてくるから不思議ですよね。
そして、こういう行動文化を日本に植え付けることができたら、ものすごく面白いと思うんですよ!

それにしても斧が降ってくるかと思いきや、にっこりと「やればいいじゃん♪」だもんなー。いや、さすがに役者が違いますわw
ともあれ、秋山さん、橋本さん。メンタリング、ありがとうございました!

参考資料:
MITのいたずらギャラリー: http://hacks.mit.edu/Hacks/
歴代MIT学生による「素晴らしきイタズラ」の数々: http://wired.jp/2013/03/27/mit-hacks/

世界に広げよう! 「イタズラ者」の輪!

さて「イタズラ」というテーマ。やはり、こいつはクールだ!と確信を深めたチーム一同でしたが、さて、ではどうやってビジネスにしていくのか、という難問に答えなければなりません。

というわけで、チーム内での議論中に出てきたアイデアをざっと書き並べると・・・

・サプライズ企画屋さん
プロポーズ、結婚式、誕生日のパーティといったライフイベントを盛り上げるための、サプライズ企画を売る。
または、大掛かりなサプライズをしたい人向けの、人集めのためのプラットフォームを提供する。

うーん、こうやって文章にしてみると、まったくイケてないアイデアですが、けっこう皆ノリ気で話してたんですよねー。
いやー、β-エンドルフィンって、本当に怖いものですよねっ(しみじみ)。

企画の提供については、すでにやっている企業がありましたが、まったくスケールしている感じがしませんでした。
また方々でヒアリングしたところ、欧米と違って日本の風土的に、結婚式とかでサプライズする人ってあんまりいないんじゃないか、という印象でした。
あと、いまいちインパクトが弱いよねー。

・地方活性化のために、イタズラ祭りを企画する
「イタズラ」という子供じみた行動を、「祭り」という文化行動にまで昇華して、地方活性化に役立ててはどうか、という案。
たとえばスペインのトマト投げ祭り「トマティーナ」なんか傍目から見るとただの子供のイタズラにしか見えませんよね(笑)
しかし、そのトマティーナの開催期間中はその街の人口が二倍に膨れ上がる、という事実を考えれば、イタズラを祭りにして地方活性化に結びつけたときの経済効果は計り知れないものがあります。

あと、それ以外にも

・企業の広告媒体になる

とか、

・教育分野への「イタズラ」の応用

とかいろいろ考えたんですけども、そのアイデアが果たしてワークするのか確証が得られなかったのですよ。

というのも、SWTの開催当日は世間一般は休日中なので、アイデアについてステークホルダーになりそうな人から意見をもらおうとしても、役所、企業など大抵の窓口は閉まっている、という問題があるのです。

つまりは、アイデアを出すのはいいけど、そのアイデアの検証をどうするか?ということもセットに考えないと、時間を有効に使うことができないんですよね。
この辺り、実際のスタートアップでも良く発生する課題ですけども。

その辺りも含めて最終的に考え出されたアイデアが、ずばり、
「イタズラ者を応援するためのクラウドファウンディング」
でした。

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※イタズラ者というと、なぜか想起されるのがこの方。アイデア豊富、行動力抜群、創意工夫をモットーとし、動物にも好かれ、いつも一位を(結果的に)他人にゆずる。うーん、なんだかものすごくいい人みたいじゃないか(笑)

自分がイタズラをする気はないけども、他人がするイタズラはちょっと見てみたい。そう考える人はけっこう多いはず!
そんな人々から寄付を募り、イタズラ者の支援へと結びつける。そして、イタズラ成功のあかつきにはその成果としての動画を寄付してくれた人々へといち早く届ける。
まさに共犯者意識を基盤にした、世にも不真面目なクラウドファウンディングが、今ココにッ!!!(笑)

アイデアそのものの出来はともかく、このアイデアの優れたところは検証方法が簡単なことです。
すなわち、このSWTの終了までに我々が何かのイタズラを考えだし、そのイタズラに寄付してくれる人がいるかどうかを探してみればいいのですから。

さあ、みんなで探せっ! 共犯者っ!!!

ストーリーを語れ!

チームの方針が決まり、検証とMVPの作成に向かって仲間が走り出してから間もなくして、長かったSWTの二日目も終わりを迎えました。
そして、その日の夜、進行役のLeeさんの計らいで、ジャズ・バンド「TAKE*BAND」の皆さんが素敵な音楽を演奏してくれることに。
心地よい音楽が流れる中、次々とビールが手渡され、やや疲れた顔をしていた会場の人々にも笑顔が戻りました。

その後、この日の締めくくりとして、各チームは現在の状況を会場の皆に向けて報告することになりました。
そのとき、Leeさんがつけた注文。それは、チームのただ進捗状況を説明するのではなく、今時点で取り組んでいることを"ストーリー"として語ってほしい、ということ。

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※ビール片手にチームの状況を話す私。背後では、バンドの方が演奏を止めて「何を言っているんだ、コイツ?」とでも言いたげな表情で顔を見合わせているのが何とも印象的です。本当にありがとうございました。

というわけで、ビールですっかり良い気分になった私は、大体次のようなことを話しました。

「私たちのチームは、イタズラ者を応援するためクラウドファウンディングをやります!
 イタズラ者ってのは、たまに迷惑だし、とんでもないバカ野郎でもあります。
 でも世界を変えてきたのは、いつだってそんなバカ野郎だったじゃないですか!
 そんなバカ野郎どもを一人でも多くこの日本に生み出すことが、私たちチームの狙いです!」

まあ、酔いにまかせて大風呂敷を広げまくった感がありますが(笑)
でも、私の言葉に嘘はありませんでした。

私がこのアイデアに触れたとき、興奮を抑えきれなかったのはきっと「イタズラ者=トリックスター」という図式が頭の中にあったからだと思うのです。

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トリックスター

トリックスターって何ぞや?という方はWikipediaに分かりやすい説明があるので、そちらをご参照ください。
ともあれ、トリックスターは物語の中でつねに重要な役割を担い、その行動が物語を進展させ、逆転させ、意外な結末へと導いていく、そんな存在です。彼らはよく途方もないイタズラをして、ヒドいときは世界の終末を招いたり、逆に困った人々を助けたりするんですが、私は昔からこういった登場人物に強い興味を抱いていました。

善玉でも、悪玉でもない。
人々を驚かせ、時には誰もが予想だにしなかった解決法を示し、だまし、笑わせ、カンカンに怒らせ、そして魅了する。
固定化した概念や秩序に"NO"と言い、嘲笑されたり、賞賛されたり。

そんな人々がもっと増えればいい。そうすれば、この世界がもっと楽しい場所に変わるんじゃないのか?
その思いこそが私たちのアイデアの本質です。

でも、じつは私は、そういったクレイジーな人々の一部が、すでに別の呼び名を得て、案外すぐそばにいるんじゃないのか? このSWTの会場の中にもすでに何人もいるんじゃないのか?と思い至って、人知れず感動していました。

彼らがなんて呼ばれているか、だって?
「起業家」ですよ。

次回、三日目に続きます!

Startup Weekendは起業家の夢を見るか? 第一日目

さてやさて。
性懲りもなく、またもや参加して参りましたよ。Startup Weekend Tokyo, May 2013 in 渋谷!

前回二月に初めて参加した時は右も左もわからない私でございましたが、二回目ともなるとアレ、多少は経験者の余裕が身に付くと思いきや、むしろ前より訳のわからない方向に走り出してしまった次第。
しかしまあ、そのあたりの経緯については後述するとして。

じつは、SWT開催当日を迎えるまでの間、DoorKeeperでずっと以前から予約を入れていたものの、精神的にブルーになっておったのですよ。仕事は山積みだわ、アイデアは浮かばねーわ、嫁が不機嫌だわ、足が水虫だわ、とまあ不安要素がいくつもあった上に、なにしろこのStartup Weekendという"祭り"、体力・精神力の消耗がハンパでないことは分かっていた訳ですからね。
当日直前まで、いっそキャンセルしちゃおうかしら、と本気で考えたくらい。

それでもなんとか気力勇気を奮い起こし、会場に向かった私でした。
そして、その場所に一歩、足を踏み入れた途端。会場の空気に全身が包まれた途端に、よみがえってきたエナジィイイイイ!!!

体の奥底から湧き出てきた熱量で、ブルーな気分なんてあっという間に吹っ飛んでしまいました。
いやー、知らぬ間に体は覚えていたんですね、そこがどういう場所なのか。
そして、これからの三日間、どれだけ興奮に満ちた体験が待っているのかということを。

というわけで、今回も思いのまま心のままに、SWT体験記をつづってしまいます。

秘密結社というアイデア

今回はですねー、ほんとーに直前まで何も考えていなかったのですよ。

前回は優勝こそはできなかったものの、決勝プレゼンまで持ち込むことができたので、今回はピッチしなくてもいいかなー、とも考えておりました。なんというか、どこかのチームの1メンバーになって、何かの役割をコツコツと真面目にこなす、まあ、そういう体験もありなんじゃないかと思っておったのですよねー。
光栄なことに何人かの方に、一緒にチームやらないか、と声をかけてもらったりして、それでもいっかなー、と。

とは言え、せっかく参加するSWT、花のピッチに参加しないというのも野暮ですわいな。
そこで日頃からシコシコと書き溜めているEvernoteのアイデア帳を開き、何か良さげなモノはないかと探したところ、目に留まったのは「自分の周囲から情報を消す」というアイデア。

今の社会、効率よく情報を集めるとか、簡単に情報にアクセスできる、というのはもはや大した価値ではないと思うのですよね。
むしろ情報があふれかえっているから、「Gunosy」とか「Naverまとめ」みたいに情報を"ふるい"にかけようとするサービスが出現しているわけです。
じゃあ、その一歩先を行くサービスと言えば、むしろ情報を人間に"届けない"サービスなんじゃないかと。

・たとえば、 ブラウザを開いても、自分に必要な情報以外はすべて透明度10%くらいで表示させるとか。
・メールはかわりに受け取ってくれて、一週間ごとの要約だけ伝えてくれるとか。
・各種SNSも周回してくれて、要約を作成してくれると共に、「現在、藤井はアンプラグド中です。週末になったら確認しますので、それまでいいね!やコメントはお待ちください」と告知してくれるとか。

まー、そんなふうにですね、人々を世の中の騒々しい情報から切り離し、情報疲れを癒し、真に人間らしい生活を取り戻させる、そんなサービスなら新しいんじゃないか、と考えたんでございます。

ところが、ピッチに参加する人数を聞いた途端に、すぐに考えを変えましたよ。
なんとその数、67人!!

そして私がピッチする順番は36番目。一人あたりのピッチの持ち時間はたったの一分。

おうふ・・・。
「情報を消す」というアイデア。
これはこれで悪くないと思うんですが、一分間でその魅力とか価値とか説明しきれるかというと、ちょっとインパクトが弱い気がしたのですよね。
67人分のピッチをただ延々と聞かされ続ける会場の皆さんの、その心の中に最後まで残ることができるのかどうか。
ぶっちゃけ、ピッチは相手に興味をもってもらえるか、それがすべてです。そこで、急きょ作戦を変更。
ピッチ開始10分前に決めたアイデア、それは「秘密結社」でした。

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※これが後に世を騒がせた「Wifi仮面」、その誕生の瞬間である(嘘)。

このアイデア、というより、ほぼコンセプトしかない状態でピッチに挑む私もどうかしていますが、話の中身はともかく言葉のインパクトだけならば全ピッチの中でダントツ!!(のはず)
それもそのはず、もしもアナタが血の通った人間であるならば、「秘密結社」と言う言葉に興味がそそられないはずはないでしょう!

フリーメーソン、黒手組、薔薇十字団、鷹の爪・・・。

激動の歴史の影には、つねに彼らの姿がありました。電信柱の向こう側から、教室の扉の影から、じっとこちらを見つめる内気なあの子のように、彼らの存在は我々人類の脳裏にそれは深ーく刻まれておるのです。
そう、すなわち、秘密結社は人類にとって永遠のキラーコンテンツと言っても過言ではないのですよ!!

FacebookTwitterといったSNSの台頭で私たちはお互いに簡単につながることが出来るようになりました。
 しかし、そのぶんだけ人間関係が希薄になったんじゃないでしょうか?
 Facebookで友達になった人のために死ねますか?
 私たちにはもっと濃密な人間関係やコミュニケーションが必要のはずです。

 PathみたいなクローズドSNSなどまだ生温い!!
 ぼくが提案するのは、もっとディープでシークレットなSNS、すなわち秘密結社です!

 秘密結社ですから、ごくありきたりなWebサービスみたいなやつはやりません。
 秘密のカードを相手に手渡したらようやく友達申請ができるような、やたらとメンドクサクて意味ありげでなくちゃダメです。
 ・・・が、ほとんど何も考えていないので、一緒にこのアイデアを磨いてくれる仲間を募集します!!」

大体、このようなことを言いましたが、つかみは十分という感じ。秘密結社、という単語を聞いて皆様、笑っておりましたからね。
そして投票の結果、見事ピッチに勝ち残ることに成功!!

くっくっく・・・、我が策にぬかりはないわっ!!
ちなみに獲得した八票のうち三票は自分で入れた分だってこと。もちろん良い子のみんなにはナイショさ。

チーム作り

さて、ピッチで勝ったからには、この三日間をともに戦い抜く同志を集めなくてはなりません。
そう、今回も楽しい楽しいチーム・ビルディングの時間がやって参りました!

たとえアイデアが良かったとしてもチームが成立しなければ、このStartup Weekend、何も始まらないのですよ。まあ、このあたりは本物のスタートアップとまるで同じですね。というわけで、仲間募集のかけ声にも自然と気合いが入るというもの。

「えー、ひみつけっしゃー、ひみつけっしゃー。秘密結社はいらんかねー。
 あ、そこのデザイナーのお嬢さん! ぼくと一緒にこのチームをやらないかい? いい秘密結社があるよー!」

うーむ。秘密結社なのに、我ながら、なんてオープンな勧誘なんだ(笑)

しかし仲間を集める時は、とにかくこちらから積極的に働きかけ、情熱をアピールすることが何よりも重要です。とにかく情熱、情熱、情熱。えーい、暑苦しい。

ともかくですね、本当にチームを作りたければ、誰かがちょっとでも興味を持って自分の前に立ち止まってくれた時点で、即座にその腕をつかみ、二度と離さないくらいがちょうどいいんですよ。

「おおっ! アナタは秘密結社向きの顔をしてます! ぜったいウチのチームに入るべきですよ!」
「いや、ちょっとぼくは他のチームも見てから・・・」
「いーからいーから。さあ、秘密結社で行こう!」

と、相手の迷惑そうな顔もなんのその。

そういえば、嫁と結婚した時もまったく同じ手を使って、無理やり市役所に引っぱりこんだのだっけ・・・。
いやー、情熱ってホントにいいものですねっ!!

そんなこんなで、秘密結社という永遠のテーマ、そのサービス開発のために集結したチームメンバーの顔ぶれは、やはり目的も相まって危険な香りに包まれましたよ!

ユーヤさん

真っ先にチームへの参加を表明してくれた19歳の大学生。
というか、いいのか? 最初のキャリア形成が秘密結社で!?
柔和なマスクからは想像できませんが、彼の心の中では、きっと現代社会に対する言いようのない怒り、憎しみ、言いがかりが渦巻いているのでしょう! わかります、わかりますよ! だって私も昔はそうでしたもん!

それにしても、これほど有望な学生を秘密結社に駆り立てるなんて・・・
大丈夫なのか、日本!?

ナオさん

浜松からの刺客。
その昔、訪れたマチュピチュで偶然にも暗黒の力を身につけ、世界中の秘密機関に命を狙われることになった男。
修羅場を知っているだけに、チームが危機に瀕した際でも、その落ち着きっぷりは並ではない。
世を忍ぶ現在の仮の姿は、営業も企画もそつなくこなすナイスガイである。

特技は、他人のMacBookを自分の物とすり替えること。

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※ユーヤさん(左)、ナオさん(右)のツーショット。二人ともさわやかな笑顔ですが「クックック・・・オレたちの力で、世界を混沌のるつぼにたたき込んでくれるわっ!!」と話しています。

タロさん

ラストサムライ
徹底的に鍛えられた論理思考力、分析力によってつねにチームの議論をリード。まさに切り込み隊長的存在。
その研ぎすまされた舌鋒もさることながら、サッカーで鍛えられた右足から繰り出される真空波の威力絶大。

じつは誰よりも平和を愛する男だが、藤井の魔の手によってチームに参加する羽目に。

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※タロさんの姿。クールな顔をしていますが、写真の見えないところでずっと藤井に蹴りを入れています。

マサヤさん

営業テロリスト。
危険思想の持ち主で、(インパクト的に)世界中に爆弾を仕掛けることを夢見るロマンチストである。
目的実現のために様々な知略を繰り出し、また行動するパワープレイヤー。

「世の中のヤツらをビックリさせてやりましょうよ!」と語るときのマサヤさんの目はマジにやばいっす!(笑)

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※マサヤさん。落ち着きたっぷりの顔ですが、この間もずっと「爆弾、爆弾・・・」とつぶやき続けていました。

セッチーさん

真のハッカー。
黙々と作業をこなしながらも、ときどき矢のように鋭い一言をチームに投げかけてはまた作業に戻る、ということをやってのける。
チーム結成後、最初の15分間でやったハッキングで藤井の個人情報、性癖、その昔ロッカーに隠した給食の残り、などは一通りチェック済み(たぶん)

それにしても、この人がプロトタイプの開発を一手に引き受けてくれなかったら、一体どうなっていたことか。

f:id:fujiitakuya:20130518232109j:plain※セッチーさん。温和な表情ですが、「ちっ、この使えねーバカどもがっ!!。やはりこのチーム、オレの力が必要だなっ!!」と不遜に言い放っています。

オデンさん

謎の妖精。
食事時になるとどこからともなく現れ、チームの進捗状態を頭に、料理を腹に納めてはどこへともなく去っていく。
その目がすべて開かれるとき、この世界は終わるという・・・。

あー、ところで仕事の締め切りは大丈夫だったんですかねー?

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※オデンさん。大仏のようですが、その正体は妖精です。

一日目のまとめ

というわけで、腹を抱え大笑いしながらも無事、チーム・ビルディングに成功したわけでした。
その名も「チーム・マンダラ」!!
うーん、怪しい。怪しすぎるぜ!

本当はもう一人、メンバーがいてその方がチーム名を考えてくれたのですが、翌日から姿を見せなくなったので文章からは割愛させていただきました。きっといろいろと冷静に考え直してしまったのでしょうね、人として。
ともあれ、チーム名をつけてくれたもう一人の仲間にも、この場を借りて感謝を捧げます!

秘密結社という危険なアイデア。
そして、そこに集った6人の男たち+妖精。

我々がStartup Weekend Tokyoの残りの二日間をどのように過ごし、何を考え、何を見出したのか。
また日を改めてお伝えしようと思います。

まて、次週!